喜連川刑務所は小高い山の上にあり、冬の寒さもずいぶんこたえるという。
「栃木県はけっこう雪が降るので、朝と夕の30分ほど暖房が入ります。それでも外のスキマ風が入る部屋もあって極寒地獄。重ね着は懲罰の対象になるのでできません。12月からホッカイロが使えますが、使用は1日1回までで、1個60円です」(B氏)
温かい食事や風呂も期待できそうになかった。
「夏でも湯気が立つ味噌汁なんて見たことないし、冬なんて麦飯が凍った状態で出てくるんです。入浴は週に2回で、1回につき15分と決められ、約50人が一斉に入ります。シャワーは1人1個確保されていますが、問題は湯船。シャワーを終えて入浴しようとしたら、すでに大量の下の毛が浮かんでいて、とてもつかる気になれません。理由はわかりませんが、脱衣所でわざと大きい方をを漏らす“不良老人”もいるんです」(B氏)
それでもテレビを視聴することができる自由時間は、刑務所内での数少ない楽しみの一つだ。
「テレビは録画ですが、そのチョイスは刑務官が判断して、受刑者の意思は反映されません。服役者の中で人気の女優は吉岡里帆(25)。長瀬智也(40)と共演したドラマ『ごめん、愛してる』(TBS系)が録画放送されてからファンが急増。吉岡関連本が刑務所内でベストセラーになるほどでした」(C氏)
他にも受刑者の間で視聴率が高いのは、経済番組「がっちりマンデー!!」(TBS系)だという。同番組は04年10月17日の放送回で、ゴーン容疑者が企業再建計画として打ち出した「日産リバイバルプラン」を紹介し、本人を直撃取材する場面も見られた。
「みんなテレビや雑誌で特集される、儲かる話が好きで、シャバに出た時に使える知恵をつけているんです」(C氏)
単調な日々が繰り返される中で、受刑者の矯正プログラムとして運動会が開催されることも。
「工場対抗リレーや大縄跳びなどの種目があって、自分は36工場の応援団を担当し、みんなの前でエールを送りました。エールは36工場の伝統があって、『トントントントンサブロク、トン』と叫ぶと工場の者が同じフレーズを返すというもの。日野自動車のCM『ヒノノニトン』のリズムです。ゴーンも36工場に決まったら、同じ業界出身として、ノリノリで声を出してほしいですね」(A氏)
この先の捜査の行方も気になるところだが、「先輩」にあたる井川氏が、獄中生活を過ごすためのコツを教えてくれた。
「刑務所に入っていると、出所まであと何年何カ月と考えてしまいますが、なるべく前方ではなく後ろばかり見ること。『まだ2年もある』と思うとつらいけど、『もう1年が過ぎた』と後ろを見たら気持ちが楽になるんです。あとは、自分を殺して、どんな理不尽でくだらないルールでも従うのみです」
「ごまかし」のきかない地獄の監視生活で、ぜいたく三昧のカリスマ経営者はどう変わるのか──。