塩分の取り過ぎが身体に悪いということは今や健康常識。しかしその塩で髪が育つという。
自然塩の効用は前にも何度か取り上げたが、最近、「塩で毛が増える」と話題になっている。ヘアスタイリストとして髪を扱いつつ、自分の薄毛と25年戦い続けた渡辺信氏の著書「塩シャンプーで髪が増えた!」(扶桑社)が話題になっているからだ。氏はその著の中でこう言っている。
〈「湯シャン」+「塩」で誰でもカンタン。 最も安全で安上がりな塩洗髪法で、髪の毛がぐんぐん生えてくる! 塩は最高の天然シャンプー〉
渡辺氏は高校生の頃から薄毛に悩み、幾多の育毛法をみずから実践。長年の研究の成果として塩シャンプーを発見したという。そしてこうも強調している。
〈塩は何よりも安全で効果のある育毛方法。ただし、洗い方と塩の種類でその効果に差が出る〉
この塩シャンプーだが、実は以前から一部では行われていた。塩の大家である故・西本友康氏が提唱していたからだ。
1905年(明治38年)以来、長く塩は、専売公社による専売制だったが、かつて専売公社で働いていた西本氏は、世界に誇る良塩作りの新技法“流下式枝条架塩田”を創始した。
しかし、1971年にわが国は塩田を廃止。そして「イオン膜」方式を採用し“化学塩”の生産に入ったのだが、西本氏は“本物の塩”作り、自然塩の普及に生涯を捧げたのだ。西本氏は洗髪についても、このように持論を述べていたという。
「海水浴に行くと頭の髪の毛だけがギドギドになる。このギドギドは海水の塩分で頭の中に閉じ込められていた廃脂が溶かし出されて、海水の温度が低いから粘っただけ。海水の塩そのものがギドギドしているのではない。お湯で洗って脂を緩めて流した後水を浴びれば素晴らしい効果。自然塩は育毛補助剤、髪の伸びが早くなる」(西本氏の功績などを紹介した株式会社「三栄」の創業者・松永永光氏の著書「塩浴革命」より)
洗髪のやり方はいたって簡単だ。容器に自然塩を入れ、少しベトベトになるくらいの水を加えて手のひらにとり、それで頭を洗うのだ。強くやることはない。頭皮に傷がつく。身体全体も塩で洗うと良い。あとはお湯で流し、水でよく身体を洗えばいい。
「フケ、抜け毛、白髪がその場でストップ。艶、張りが出る」
西本氏は言い続けていた。塩シャンプーの広まりは、彼の努力が実った成果なのかもしれない。
(谷川渓)