進退を懸けた場所に挑んだ横綱・稀勢の里は、初場所初日の1月13日に小結の御嶽海、2日目の14日に平幕の逸ノ城、そして15日も平幕の栃煌山に敗れ3連敗。昨年秋場所の千秋楽(5日目から休場)から8連敗(不戦負けを除く)を喫した。そしてついに1月16日午前、師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)が、稀勢の里の引退を明らかにしたのだ。
「同じ負けるにしても内容が悪すぎた。2日目の逸ノ城との取り組みでも、立ち会いから逸ノ城を押し込もうとしますが、いなされてよろめき、何とか残ったが、はたかれて転がされた。背中にベットリと砂がつきましたが、もはや横綱の負け方ではなかったですね」(相撲ライター)
確かに下半身にまったく力が入ってないような転がり方に、場内は悲鳴とどよめきに包まれ、ネット上でも「復活してほしいけど、もう気持ちも切れちゃったみたいですね。もう無理かな」「もうこれで引退したほうがいいと思う。横綱の名を汚してはならない」と、あきらめムードが広がっていた。
「場内のお客さんも同じ雰囲気でしたね。普通、横綱が格下の力士に負けると座布団が舞うのですが、それがなかった」(前出・相撲ライター)
デイリースポーツの報道によると、師匠の田子ノ浦親方は、「本人が何か言ってくれば」とも語っていて、連敗した時点で、進退は横綱本人の意向に沿って判断する方針だったようだ。
最後の対戦相手となった栃煌山は、初日から横綱・鶴竜と白鵬に連敗していたが、「白鵬戦は、あわやというところまで追い詰めています。調子は決して悪くなさそう」(前出・相撲ライター)と、調子を上げてきており、結果、一方的に寄り切る形で金星をあげた。そして稀勢の里は1場所15日制が定着した1949年以降、横綱としては貴乃花を抜いて史上ワーストの8連敗を記録することになった。“平成最後の横綱”は、文字通り、新たな時代を迎える前に土俵を去る。
(石見剣)