稀勢の里の土俵をずっと見つめてきた元NHKアナウンサーで相撲ジャーナリストの杉山邦博氏が言う。
「今までよくぞ(モンゴル同盟の壁に)耐えてきた。耐えた分だけ、咲かせた大輪の花も大きい。新入幕は貴乃花に次ぐ史上2位のスピード出世でしたが、大関になってから5年。モンゴル人に抜かれ、日本人の琴奨菊(33)や豪栄道(30)にも優勝で先を越された。悔しさはいかばかりかと思いますが、その思いをそぶりにも見せなかった。ここ一番の相撲で考えすぎるあまり、硬くなったり動きがギクシャクしたりして星を落とすことが続き、綱を逸してきましたが、今回の優勝、横綱昇進であらゆるものが吹っ切れたはずです。もともと実力者が自信をつかんだだけに、これからは安定感抜群の簡単に負けない横綱になると思いますねぇ」
相撲協会関係者も、土俵の中心は白鵬から稀勢の里へ移る、という見解だ。
「日馬富士、鶴竜は前半戦で星を落とし、はやばやと優勝戦線から脱落することがたびたびある。そういう弱い横綱は必要ないとファンの風当たりは強くなるでしょう。昨年の九州場所で優勝し、初場所前まで絶好調が伝えられた鶴竜は連続優勝の可能性ありと言われながら、5敗を喫して休場。頸椎斜角筋損傷、左肩鎖関節脱臼と、言い訳ばかりです。九州場所での優勝は何だったのかと思いますよ」
日馬富士も鶴竜も「1強」白鵬を補完する勢力だったが、これからは稀勢の里を中心とした1強3弱の時代に突入する‥‥。相撲部屋関係者が言う。
「白鵬は東京五輪までやって開会式で土俵入りを務めるのが夢だと言っているが、とてもそこまでもたない。五輪で土俵入りをするのは稀勢の里ですよ」
腰高を調整し、左からのおっつけはもちろん、右からの攻めも磨けば、さらに強くなるだろう。
週刊アサヒ芸能は今年1月19日号で、稀勢の里の現在の師匠、田子ノ浦親方(40)=元前頭・隆の鶴=との確執、そして部屋崩壊が横綱昇進を阻んできた、と報じた。
稀勢の里が入門したのは鳴戸部屋。その鳴戸親方(元横綱・隆の里)が11年11月に急死すると、田子ノ浦親方が部屋を継承したが、本人にはまったくヤル気がなくシブシブ承諾した経緯がある。その後、年寄株を巡るトラブルで、田子ノ浦株を取得。鳴戸部屋は消滅し、稀勢の里は自動的に田子ノ浦部屋の所属力士となった。
ハナからヤル気がなく、その人間性を「ちゃらんぽらん」と評される田子ノ浦親方は案の定、弟子の稽古中に雑誌を読みふけるなど、指導力ゼロを露呈。
「稀勢の里は心底、田子ノ浦親方をバカにするようになりました。『四股を踏まなくなった』と指摘され始めても、親方がロクに指導をしないから、たまに言われても『十分やっている』と耳を貸さなかった」(前出・相撲協会関係者)