ところが、橋下氏の“つぶやき”に反論したのが、冒頭の小倉だった。
連日、入試中止を批判的に報じていた「とくダネ!」で小倉は、「どうしてそこ(入試中止)に行くのか」と発言。これに対し、橋下氏はツイッターで小倉を名指しして、こう記した。
〈実情を何もわかっていない!〉
橋下氏のもとには調査チームから桜宮高校のとんでもない実態に関する情報が寄せられる。その中での発言だった。小倉はこのツイッターに同番組で反論する。
「橋下さんが知らないことを報道が知っていることだってあると思いますけど」
こうした経緯から、橋下氏と小倉のナマ対決に至った。しかし、議論はかみ合うことなく、橋下氏の独演会状態。小倉の質問が合いの手に聞こえるほどであった。まさに、対立者を作り出し、叩きのめすという橋下氏の術中にハマってしまったのだ。
ここで、以前なら「橋下劇場」の観衆となった国民から「よくやった!」と声が上がったはずだが‥‥。
桜宮高校バスケ部主将が顧問からの体罰を苦に自殺したことを重く受け止めた橋下氏は遺族に謝罪。この迅速な行動については、多くの国民が好意的に受け止めていた。
その後、橋下氏は大阪市教育委員会(以下、市教委)に対し、運動部顧問全員の異動、来春の体育2科の入試中止などを要請。本来は政治から独立した存在であるはずの教育委員会。首長の意向に左右されることはないのだが、橋下氏は「予算執行の権限は自分にある」として、体育科教員への給与を支払わないという揺さぶりをかけてきた。
そして、市教委は体育科の定員を普通科に繰り入れて入試を中止するという玉虫色の結論を出した。
しかし、問題なのは桜宮高校体育科を目指していた受験生である。橋下氏の主張にも理はあるが、目標を失った子供たちがかわいそう‥‥。そんなふうに、多くの国民は戸惑っている。
桜宮高校の卒業生にとっても同じだ。本誌は複数の同校OBに取材した。
「体罰いうたら、ビンタやゲンコツを思い浮かべると思うけど、そんなレベルと違う。肋骨が折れたいうレベルが日常にあったんやから異常ですわ。橋下さんには大賛成。徹底的にやってもらいたい」(6年前に卒業した水泳部OB)
そうした声の一方で、正反対の意見もあった。「自分が通っていた頃とは違っているのかもしれません。でも、在校生や保護者にまで責任の一端を負わせるのは違うんやないですか。受験生を思うと不憫でなりません」(15年前に卒業したサッカー部OB)
このバトルにはなかなか白黒がつけがたいのだ。