村野武範主演の「飛び出せ!青春」(日本テレビ系)は、学園ドラマの金字塔として名高い。主題歌の「太陽がくれた季節」を歌った西口久美子(68)は、今も大切に同曲を歌い続ける。
西口、高田真理、岩久茂の3人で「青い三角定規」が結成されたのは71年のこと。恩師のいずみたく作曲によるデビュー曲「太陽がくれた季節」(72年)は、ドラマ主題歌としてヒット。レコード大賞新人賞や、紅白歌合戦にも選出された。
「日本テレビのドラマの主題歌が、他の民放やNHKにも出演できたのは画期的なことだったようですね。それだけヒットの規模が大きく、他局も門戸を開いたようです」
紅白にジーンズで出場したのも、大きな話題となった。この72年は吉田拓郎、井上陽水の台頭でフォークブームが過熱。西口らも「フォークグループ」とくくられたが、メンバーには「ポップスグループ」という自負があった。
デビューまで3人でカーペンターズ、ビートルズ、ビージーズの楽曲を中心にハーモニーの練習に明け暮れ、アレンジも自分たちで手がけた。フォークとは明らかに一線を画していたのである。さらに──。
「私はもともとダンスグループが出発点で、歌手を目指していたわけではないんです。だから初出場した紅白でも、フォーリーブスと一緒に西郷輝彦さんのバックで踊るなど、少しでも披露する場を求めていました」
コンスタントにヒットを飛ばしていたが、グループは73年に解散。結成からわずか2年で燃焼した形になる。以降、西口はソロとして歌や芝居、グラビアの仕事にも取り組んだ。
そして06年8月、33年ぶりに「青い三角定規」を再結成することを発表。ツアーも開催される予定だったその直後の9月11日にリーダーの高田が飲酒運転で人身事故を起こし、いったん白紙となる。
さらに高田は9月26日、限りなく自殺に近い転落死で世を去った。
「3人で歌うことはかなわないけど、では『太陽がくれた季節』も封印したほうがいいのか‥‥と悩みました。そしたら真理君のお母さんから電話をいただき、『クーコさんらしく、明るく歌い続けてください』と逆に励まされたんです。以来、さらに大事に歌っていこうと思いました」
西口がデビューした72年は、麻丘めぐみ、森昌子、三善英史、郷ひろみら「歌謡曲の黄金時代」を演出する同期が大勢いた。昨年、惜しまれつつ世を去った西城秀樹もその一人である。
西口は秀樹の最晩年を、同じコンサートを回る仲間として一緒に過ごした。
「最後となった昨年4月14日の栃木・足利市も一緒だったんです。ラストに全員で秀樹さんを囲んで『Y.M.C.A』を歌うんですけど、バックの振り付けは私が担当していました」
その日の秀樹は「今日は楽しかった~」と、これまでになく上機嫌だったという。西口も足首や手首のエクササイズのやり方を秀樹に伝授していたが、体調が回復することはなかった。
今なお振り付けに高いスキルを誇る西口は、おりも政夫や江木俊夫が歌う「踊り子」でバックのダンスを担当する。
「デビューした年の紅白で一緒に踊って、今またこうして同じ舞台で踊れるなんて不思議な縁を感じます」