さらに玉城氏らが次なる対抗策として画策しているのが、辺野古北側の「軟弱地盤」問題だ。埋め立ての広い区域で改良工事が必要なことが判明し、工期の設計変更が出ていた。
「変更するには、知事に申請して承認を受けなければなりません。地盤改良工事をすれば経費が膨らみ、当初の計画と異なってくる。それを盾にして、玉城氏は申請を承認しない構えで対抗するとみられています」(政治部記者)
それでも、この一手は安倍政権を脅かす決定打にはならなそうだ。
「建設工事を遅らせることはできますが、16年の最高裁判決がのしかかっているので、工事そのものをストップすることはできないのです」(須田氏)
たとえ法廷闘争に持ち込んでも、これまで辺野古を巡る国と県の裁判は、全て国が勝訴しており、厳しい戦いが待ち受けている。
安倍政権側も沖縄に対して黙っているわけではなかった。沖縄の振興予算のうち、地方自治体が使途を決められる「一括交付金」は30年度予算で1188億円で、前年より171億円も減っている。今年2月に開かれた沖縄県議会では、「2年連続で減額になったのは国との対立が要因ではないか」と不安視する質問も出ていた。
「安倍政権はアメとムチを使い分けているようですが、今の沖縄は経済が潤っているので、どれほど効果があるのかは未知数です」(山村氏)
強気な安倍政権のアキレス腱になるのは、沖縄での選挙だろう。昨年9月30日の沖縄県知事選では、8万票の大差をつけられ、野党系の「オール沖縄」が推す玉城氏に敗れている。
「衝撃だったのは、絶大な人気を誇る自民党の小泉進次郎氏(37)を何度も沖縄入りさせたのに、県民がなびかなかったこと。公明党の学会票も伸びず、ショックは大きかった」(自民党関係者)
夏の参院選の前には前哨戦として、4月に衆院沖縄3区補選の火蓋が切られる。自民党は元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)の擁立を決めていた。
「16年参院選で落選しましたが、現在は大臣補佐官を務めています。安倍総理らから『あいちゃん』と呼ばれる愛されキャラで、今回の選挙では、小泉氏だけではなく、総動員で当選させる構えです」(政治部記者)
それでも自民党へのアレルギーは強く、山村氏は苦戦を予想する。
「県民投票後の記者会見で、岩屋毅防衛相(61)が『沖縄には沖縄の民主主義があり』と発言し、党内では本音かもしれないが、あれは言ってはいけなかったと話題になった。県民感情をますますあおってしまい、補選だけではなく、参院選も落とすのではないでしょうか」
安倍政権と沖縄の「全面戦争」の行方は、「なんくるないさー」のひと言では済まなそうである。