前立腺肥大や過活動膀胱による「排尿障害」は、誰にでも起こりうる問題だ。前出・中村院長が解説する。
「前立腺肥大症の場合、男性ホルモンの分泌が減ることで、前立腺がより少なくなったホルモンをたくさん吸収しようとして肥大化します。一方、過活動膀胱は、膀胱収縮のレセプター(受容体)が過敏に反応してしまうことが機能的な原因です。ではなぜそうなるかについては、明確な原因はわかっていないんです。ただ確実に言えるのは、ともに加齢による老化現象でなりやすくなるということ。ですから、もしなってしまった場合は防ぎようがないですから、諦めて治療に当たってもらうしかありません」
つまり排尿障害については“経過観察”というのが、まったく意味をなさないのである。しかも、病状が進行してしまうと治療も困難になっていくだけに、兆候が現れたら早めの受診を心がけたい。
「50代の働き盛りのサラリーマンの方で、『しょせんは排尿の悩み。忙しいから』となかなか来院しないケースも多い。実際、感じ方はその人しだいということもあって、来院される方の多くが3~4年間悩みを抱え、来られる方が大半です。そうなると、やっと受診したのにもう膀胱の壁が伸びきってしまっているという例もある。また、尿の出が悪くなる前立腺肥大症と、漏れやすくなる過活動膀胱を併発した場合、尿を出す治療と出さない治療をしなければいけないわけで、非常にやっかい。さらに、肥大が進むと、尿閉といって尿が排出されない病気に進行してしまう場合があります」(前出・中村院長)
以前は、「前立腺肥大といえば(外科)手術」という時代もあったが、今は薬物療法も進んで、患者の負担も劇的に軽減されるようになった。
前出・中村院長が言う。
「前立腺肥大の場合、前立腺の筋肉を緩めるα1ブロッカーという薬と、前立腺を小さくする抗男性ホルモン薬などがあります。過活動膀胱では、膀胱の収縮を抑える抗コリン薬や膀胱を弛緩させるベタニスなどを服用。費用は(1錠約150円の薬を2錠服用したとして)1日300円ほどです。『いつまでも薬を飲み続けるのは嫌だ』という方や、若くしてなってしまった方の場合は、内視鏡からレーザーで肥大した前立腺を切除する手術をすることもありますが、入院費込みで約20万~30万円ほどです」