今週は、オークス。この樫の女王を決める一戦に、“桜の女王”グランアレグリアの名がない。先日行われたNHKマイルCにホコ先を向けたためだが、桜花賞を圧倒的な強さで勝った馬が抜けたとあって、混戦の様相を呈している。
桜花賞組では2着シゲルピンクダイヤ、3着クロノジェネシス、4着ダノンファンタジー、5着ビーチサンバといったところ。
トライアルのフローラSからは、勝ったウィクトーリアを筆頭に2着シャドウディーヴァ、3着ジョディーが。そして“残念桜花賞”の忘れな草賞を圧勝したラヴズオンリーユー、さらにはフラワーCを完勝、ここ一本に備え満を持すコントラチェック。これらが人気、有力どころと言っていいだろう。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの16年間、その馬単での万馬券は5回(馬連も5回)。この間、1番人気馬は6勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着4回)。1、2番人気馬のワンツー決着は4回。つまり、比較的堅いか中穴傾向のGI戦だが、それでも人気勢総崩れということもままある。絶対視できる抜けた馬はおらず、各馬の力が拮抗している今回は、波乱の目が十分。馬券的にも、かなりおもしろい一戦とみていいのではないだろうか。
いずれの路線を取った馬に分があるか比較は難しいが、やはり王道の桜花賞を使った組に一日の長ありとみたい。混戦になればなるほど、厳しい競馬を経験してきたことがモノを言うはずだからだ。
しかし、桜花賞組でも、前述した有力どころではない。期待し、狙ってみたいのは、7着に敗れたエールヴォアである。
まずはこの馬の桜花賞を振り返ってみよう。
「素直で乗りやすい馬」(橋口調教師)が、この時ばかりは後手を踏んでしまった。そのため、それまでと違って後方からの競馬。しかも2番枠だっただけに内で包まれ通しで、直線を向いたところでも後ろから4番手。レースの流れが後半45秒0-33秒3のスローペースでは、挽回がかなわないのもやむをえまい。
それでもメンバー中2番目に速い上がり脚で、勝ち馬とはコンマ8秒差の7着に押し上げてみせたことは評価できるのではないか。跳びが大きく、多少器用さに欠けるタイプ。であるなら、スタートミスは致命的でもあった。
しかし、今回は東京の2400メートルが舞台。直線が長く広いコースは、この馬にとって間違いなく競馬をしやすいはずだ。「切れ味にやや欠けるものの、息の長い末脚が持ち味」(橋口師)なら、なおさら東京向きの馬と言っていい。
それに有馬記念を制したヴィクトワールピサ産駒。2400メートルの距離は歓迎だろう。それは1800メートルの未勝利戦を好タイムで圧勝、2000メートルのエリカ賞を楽々と逃げ切ったことでもわかるはずだ。
状態もすこぶるいい。1週前の追い切りも軽快かつリズミカルだった。
橋口師をはじめ、厩舎スタッフは「休み明け3戦目。この中間、大幅な良化ぶりを見せている。心身ともにたくましくなってきて、これまでで最もいい状態で臨めそう」と、仕上がりのよさを強調する。
であるなら、期待していい。
ステイゴールド(GI香港ヴァーズ)、サッカーボーイ(マイルCS)など近親、一族に活躍馬がズラリといる血統も魅力。よほどの道悪にならないかぎり、大きく狙ってみたい。