今年で第60回を迎える宝塚記念。この関西版グランプリが今週のメインで、春競馬の掉尾を飾る大一番である。
大阪杯を制して勢いに乗るアルアインを筆頭としてGI勝ち馬が6頭出走してくる豪華版。見応え満点の白熱した戦いが繰り広げられること請け合いだ。
ルメール騎手とコンビを組むレイデオロ、大阪杯でデッドヒートを演じたアルアイン(1着)、キセキ(2着)が最右翼とみられ、人気を分け合うと思われるが、スワーヴリチャード、リスグラシュー、マカヒキ、エタリオウも差がなく続き、結末がどう転ぶか予断を許さない。
真夏前の暑い時期でもあり、梅雨で馬場が悪化する可能性もある。人気、有力どころで簡単に決まるかどうか。馬券的には難解なGI戦でもある。
実際、このレースに馬単が導入されて以降、これまでの16年間、馬単での万馬券は7回(馬連3回)も出ている。この間、1番人気馬は4勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着2回)。1、2番人気馬のワンツーはわずか1回で、比較的よく荒れていることがわかる。
あとは、この季節柄、出走頭数が少ないわりに、暑さに強い牝馬が活躍しているのは見逃せない。紅一点のリスグラシューは、要注意というべきか。
いずれにせよ、体調のよしあしの見極めは大切だが、それでもGI戦で勝ち負けした有力勢を優位に見るべきなのは確か。前記した人気どころが、よもやの凡走に終わることは考えにくいからだ。
とはいえ、伏兵陣も多彩。穴党としてはむろんのこと、そちらに目を向けたい。狙ってみたいのは、そんな1頭、スティッフェリオである。
初めてのGI挑戦となった前走の大阪杯は7着に敗れたが、終始2、3番手の積極策に出て、見せ場たっぷりの好内容。勝ったアルアインとコンマ5秒差だったことは評価していい。
以前は使い減りするタイプだったが、ここにきて体重が減らなくなった。ひ弱さが影を潜めて本格化してきたからではないだろうか。だからこその連続GI挑戦となったのだろうが、音無調教師は、
「ずいぶんとたくましくなった。稽古でも動くようになっているし、強敵相手の大阪杯がいい経験になり、地力強化してきたことも確か」
と、ステップアップしたことを強調する。
大阪杯後、ここ一本に的を絞り、3カ月の間隔を置いてじっくり調整してきた点も好感が持てる。
「万全と言っていい仕上がり状態。心おきなく送り出せそう」と、音無調教師をはじめ、厩舎スタッフが胸を張るほどの出走態勢が敷かれているのだ。
1週前の追い切りもリズミカルで、まずは文句なし。であるなら人気、有力どころに割って入れるのではないか。いや、チャンスは大いにあっていい。
母はGI2勝馬。ともに芝の6ハロン戦と短距離馬だったが、父は長丁場を得意としたオクテのステイゴールド。この父、母の血がみごとにマッチしたのだろう。スティッフェリオは、この2000メートル前後の距離を最も得意としているのだ。
そのうえ阪神は【2】【5】【1】【1】【7】着(5着は休み明けで、7着は前走の大阪杯)と、実に相性がいい。言ってみれば、走れる条件がそろっているわけだ。
それに血統、走りっぷりから、多少の道悪でもまったく問題あるまい。晴雨にかかわらず、一発は十分。大いに期待したい。