政治ジャーナリストが語る。
「衆院選当選後のことです。石原さんを長く支えていた片腕とも言えるスタッフが、末期ガンで入院。体調不良を押して、慎太郎さんのために、と尽くした人物がついに倒れてしまったのです」
このことを知った石原氏は押し黙り、
「かわいそうだ‥‥」
と、さみしげにつぶやいたという。
前出・政治部記者が続ける。
「周囲の猛反対を押し切って、今回の選挙に出馬したのは、本気で総理大臣のポストを取りに行ったからです。ところが予想外の自民圧勝で、その可能性はついえてしまった。スタッフたちは今でも『晩節を汚した』と悔やんでいます。72年の参院議員辞職、95年の国会演説での議員辞職発表。そして、今回の都知事辞任と、石原さんの『辞』は常に突発的でした。総理大臣という目標を失った石原氏が『燃え尽き症候群』にあると指摘する政界関係者は多く、突然、投げ出してしまう可能性はある」
石原氏に辞職されて最も困る人物は、橋下徹大阪市長(43)である。先日も、日銀総裁人事を巡って、維新所属の国会議員が「橋下は口出しするな」と発言したことを伝え聞き、激怒のメールを送り、維新内のゴタゴタが露呈したばかりだ。その後、橋下氏は、病床の石原氏に電話し、
「橋下君らしいな。気を悪くしてすまない」
と、声をかけてもらったことを会見で明かした。前出・政治部記者が語る。
「維新に合流した旧・太陽の党のメンバーは永田町で生き抜いてきた百戦錬磨の政治家です。“石原慎太郎”というおもしなしに、橋下さんがコントロールすることは難しい。会見で発言したのも、自分と石原さんとのつながりをアピールし、所属国会議員にプレッシャーをかけているのです」
分裂の危機をはらんだ維新だが、この夏には、参院選という一つのヤマ場を迎える。その重要性を前出・平沼氏が語る。
「TPPが大きな争点になるでしょう。我々は政治家として国益を守らなければならない。自民党に対しても国益を損なうことには反対をしなければなりません。そのために、参議院でキャスティングボートを握らなければならないのです。そのあとは憲法改正があります。石原さんは、そうした大事の前に体力を蓄えていると考えます」
維新の分裂危機と、目標の喪失──2つの病と石原氏がどう戦うのか。今後の展開が待たれるのだ。