石原氏の一連の言動を、「空虚な小皇帝~石原慎太郎という問題」の著者であるジャーナリストの斎藤貴男氏はこう分析する。
「息子である伸晃氏(55)の自民党総裁選惨敗、宏高氏(48)の選挙違反疑惑など石原氏を悩ます事象は多い。でも、最も悩ましいのは自身の病気でしょう。かねてから石原氏は自分の花道は憲法改正後に戦争をすることだと考えていると見ています。本心では憲法改正をしたい安倍晋三総理(58)でさえ、参院選までは景気回復最優先で本心を語らない戦略をとっているというのに、声高に憲法改正を掲げるのは、先を見越してというよりも病気になった石原氏の焦りの表れでしょう」
さらに、石原氏の焦燥感を強めている理由は政治状況にもある。
「野党の陣笠議員になるつもりはない」
これは石原氏が東京都知事を辞めて、再び国政に殴り込もうとした時に周囲に語ったとされるセリフだ。「陣笠」かどうかは別としても、石原氏が野党議員であることに変わりはない。
「昨年の衆院選出馬を決めた直後までは、石原氏もあわよくば総理の椅子に座るという野望があったと思います。第三極の結集もままならず、選挙結果的には維新の会が躍進しても、石原氏にとってみれば総理の椅子は遠ざかった。ましてや、安倍内閣は高支持率をキープしている。ただし、比例代表での自民党の得票数を見れば、夏の参院選で自公が参院での過半数を取ることは容易ではないのも事実です。維新の会がキャスティングボートを握ることは非現実的な話ではありません」(政治部デスク)
参院選の結果しだいで、石原氏にも閣僚ポストが転がり込む可能性がある。
むろん、石原氏がそれで満足するかどうかはわからないが、古巣の自民党からはこんな声も聞こえる。
「最近の言動を見ていると、石原氏は晩節を迎え、夢を小さくさせたのではないか。参院選後に、副総理で内閣に潜り込みたい。しかも、『憲法改正担当』なんて肩書が付けば、国会答弁もそこそこに好き勝手なことを言って、フンゾリ返っていられる」(自民党関係者)
こんな嫌みが石原氏の耳にも届いたのか。冒頭の朝日新聞のインタビューではこう語っている。
〈僕は橋下君を首相にしたい。度胸があるし命がけで仕事をしている。男同士の共感がある。(中略)橋下君をもり立てていくのが政治家としての最後の仕事だ〉
しかし、この発言の裏側を前出・政治部記者がこう解説するのだ。
「石原氏の側近は退院後に何度も『憲法改正の道筋をつけて、橋下氏を総理にするというのが、晩節を汚さない最後の花道です』と進言したそうです。その側近は石原氏が『腹の底から受け入れたのかどうかはわからない』と言っていました」
自民党関係者の嫌みのほうが、石原氏の本心に思えてくるのである。