しかし、これについても石原氏は会見で「契約や土地代金の算定など瑕疵担保責任には知見がない。瑕疵担保という言葉もこの問題が出て初めて知った」「聞いていない」と、都元幹部の証言と完全に違った証言をしている。そして、
「(豊洲移転は)専門の部局などがきちんとやって上がってきたもの、これを了としてくださいと。それにうなずいて私が印を押した。それが行政の手続きというもの。みんなで決めたこと」
と繰り返したのだ。石原氏に近い関係者は話す。
「記憶にないというのはある意味正直だが、責任という点でよけいに世論の反発を招いた。結局細かな事実関係は、これまでの文書や週刊誌インタビューの域は越えておらず、元都職員の証言との矛盾も出てきてしまった。百条委でさらに突っ込まれることになってしまった」
今後舞台は都議会の百条委に移るが、小池知事支持の会派幹部が言う。
「報道も続くので、存在感を高めるのは言うまでもなく小池知事。石原さんは表に出れば出るほどマイナス点になります。小池さんはただ眺めていればいいということです」
小池氏支持の都議らからは、豊洲移転問題を住民投票で決着させてはどうかという声も出てきている。
「都議選に住民投票をぶつけるというプランはありだと思う。確実に投票率は上がりますし、小池派の候補は圧勝できる」(前出・会派幹部)
小池氏が石原氏を追い込みつつある状況は、石原氏の息子の伸晃氏にも影を落としつつある。先日、伸晃氏率いる石原派から平沢勝栄衆院議員が脱会する意向を示した。自民党の東京選出で、閣僚経験者である国会議員はこう話す。
「平沢さんは東京選出だが、今後東京の政界地図の中で小池さんがますます力を発揮する可能性が高いと見ているんじゃないか。もはや父親の威光が消えつつある中、もう伸晃氏ではないと見限ったのだろう。小池さんによって、石原ファミリーそのものが崩れていくのかもしれない」
「小池vs石原」の構図があるとすれば、軍配は小池知事に上がりつつあるようだ。
鈴木哲夫(ジャーナリスト):58年福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「誰もかけなかった東京都政の真実」(イースト・プレス)が絶賛発売中。