脳梗塞から復帰した“暴走老人”が再び雄たけびを上げた。「憲法改正!」「橋下氏を総理に!」と声高にブチ上げるものの‥‥。なぜか、かつてのような威勢を感じさせない。それは、「孤独」と「病」による焦燥で、“男としての野望”が縮んでしまったためだった。
〈軍事国家になるべきだ〉
4月5日付の朝日新聞朝刊に、こんな仰々しい見出しとともに、日本維新の会・石原慎太郎共同代表(80)のインタビューが掲載された。
この記事によれば、石原氏は夏の参院選では憲法改正を〈争点にしなければいけない〉とし、保守色を強めた維新の会綱領に基づいて、こう語っている。
〈日本は強力な軍事国家、技術国家になるべきだ。国家の発言力をバックアップするのは軍事力であり経済力だ。(中略)核武装を議論することもこれからの選択肢だ〉
実にマッチョな信条であり、石原氏らしい発言である。しかし、「軽い脳梗塞」から復帰して以後、その発言は語気ばかりが強まっている。
3月30日の党大会で橋下徹共同代表(43)とネット対談した際には、「米国の妾みたいな形で日本を安住させた憲法をぶっ壊す」
と過激な発言をしたかと思えば、その後の会見ではこう言って、“石原節”を炸裂させた。
「俺が死んだら、日本は退屈になるぞ。早く死にゃいいと思っているだろうが、そうはいかねぇ。生きているかぎり恨まれ続ける」
そして、4月2日の党国会議員団役員会で、再びこうブチ上げたのだ。
「参院選の焦点は憲法改正になる。政界再編の大きなメルクマール(指標)になる」
ある政治部記者が言う。
「憲法改正が石原氏の持論であることは誰もが理解していましたが、まだ国民的関心事になりえていない時期に、唐突な発言でした。維新の会の国会議員団の中にも、キョトンとしている議員がいたほどです」
旧太陽の党系の議員と大阪維新の会系議員との溝が露呈し、維新の会内部は「東西冷戦」と呼ばれる状況にある。石原氏は入院中に孤立を深めてしまった。とはいえ、強い言葉で憲法改正を訴えたところで、ただただ1人ぼっちになるばかりなのだ。
現在の石原氏が置かれた微妙な現状を、機敏に察知するのがマスコミだ。
「我々の間では、石原氏を『第二の黄門様』と呼んでいます。昨年、政界を引退した渡部恒三氏の後釜という意味です。つまり、その発言は政局に影響はないけど、絵的にはニュースに差し挟むにうってつけということです」(民放局関係者)
永田町にいる議員だけでなく報道陣からも孤立する石原氏。世論に対して、憲法改正という風を送り込んでも、なかなか期待が膨らみそうにはない。