青葉容疑者が住むさいたま市内のアパートでは、たびたび偏執的な「奇行」が目撃されていた。1Kで家賃約4万円。実は4年前に引っ越してくるまで、さいたま市内の更生保護施設にいたというが、そこでいったいどういう暮らしをしていたのか。応対した施設職員は、
「具体的なことはお答えしかねます」
と話すのみ。管轄する法務省の統括保護観察官によれば、
「刑務所を出て保護観察がついた人で、引き取る親族と折り合いがつかない場合、一時的に食事と寝泊まりする場所を提供。その間に住む場所と仕事を見つけて自立支援をしていきます」
その後、青葉容疑者はアパートを借りて住んでいたが、隣の部屋の住人男性は、昨年までものものしい大音量に悩まされ続けたと証言する。
「夜中の12時から2時くらいの間にゲームのBGMが長時間、けたたましく鳴るんです。直接注意するとトラブルになるので警察に相談しました。今年に入ってからはボリュームを上げることはなくなりましたが」
青葉容疑者は身長180センチと大柄で、スポーツ刈りの髪にメガネをかけ、威圧的な風貌だったという。別の住民も不審行動に首をかしげる。
「昼間に出歩くことはほとんどなく、夜中になると愛用のロードバイクでどこかへ出かけていた」
犯行直前、青葉容疑者はアパートで常軌を逸した行動に出る。隣室の男性が明かすには、
「7月14日の午後でした。私(と青葉容疑者)は1階に住んでいるのですが、その日、上の階からの物音を私の部屋からと勘違いしたらしく、壁をドンドンと叩いて、どなってきたんですよ」
男性は自分ではないことを説明しようと、青葉容疑者の部屋の呼び鈴を押した。ドアを開けた青葉容疑者は、いきなり男性の胸ぐらと髪をつかんで「殺すぞ」と一喝。隣室男性が続ける。
「それから10分ほど暴言を吐かれ続けました。何度も『俺には失うものはないんだ』とすごんできました」
この騒動が収まったあと、男性は近くの交番に相談したが、「事件ではないので」と直接的には対処してもらえなかったという。
「こういうことがあったので引っ越しも考えています、と警官に訴えましたが、当面の自衛策としてドアチェーンを新たに購入しました」(隣室男性)
このトラブルから4日後に起こしたのが、前代未聞の放火殺人だったのだ。京都府警は身柄確保からほどなくして、精神疾患があったとされる青葉容疑者の氏名を公表した。事件の重大性を考慮しての異例の措置である。
現在、青葉容疑者自身も重体となっており、回復を待って捜査が本格化するとみられている。青葉容疑者が発した異様すぎる動機「パクリ」「小説を盗んだ」とは何を意味するのか──。
だが、どういう供述をしようとも、巻き添えにされた34名の命が返ってくることはない。