アイビスサマーダッシュ。直線のみの芝1000メートルで争われる日本で唯一無二の重賞競走で、それが新潟開幕週のメインだ。
コーナーがある6ハロン戦と違って、ごまかしの利かない、それでいて単純にスピードを競う重賞ではない。今年も顔ぶれがよく、スピード自慢がそろったが、馬券は簡単ではない。
馬単導入後、これまでの17年間、その馬単での万馬券は6回(馬連では、わずか1回)。よく荒れる重賞とは言いがたく、ノンキに構えていると、まま大穴になるケースに出くわす──そんな重賞である。
この間、1、2番人気のワンツー決着は3回。比較的人気どころから人気薄まで、少しばかり手広く流してみるのが馬券の筋ということだろう。
では、さらにデータをひもといてみよう。3歳馬から6、7歳馬まで、年齢に関係なく、どの年代でも状態さえ整っていれば期待に応えるべく好走している。
特に知っておくべきは、牝馬が圧倒的に連対を果たしていることだ。牡馬に比べて出走頭数が少ないことを思うと、特筆すべきだろう。この夏場は暑さに強い牝馬を狙え──ということだが、特にごまかしの利かない短距離戦。しかも直線のみの唯一の重賞では、突発力のある牝馬は重視しなければいけないということだ。
そうした視点に立ち、今回狙ってみたいのは、生きのいい4歳牝馬のラブカンプーだ。
3月に中京で行われた高松宮記念(18着)以来、4カ月ぶりのレースになるが、最下位に大敗した直後から次走はこの新潟の千直と決め込んで、まずは放牧でリフレッシュ。心身ともに一新させ、しっかりと調整、乗り込んできた。
なので休み明けといっても重め残りの状態ではないばかりか、「ひと息入った今のほうが持てる力を存分に発揮できる出来」と、森田調教師が胸を張れるまで、臨戦態勢はきっちり整っている。そうであれば、期待しないわけにはいかないだろう。
昨年のこのレース、その後のGIスプリンターズSともに2着に好走するなど、とにかくスピードは一級品。兄のキングハート(GIIIオーシャンS勝ちなど芝1200メートル戦で5勝、2着4回)を見ればわかるとおり、一族はスピードを身上としている。
典型的なスプリンターだった父ショウナンカンプを思えば、ラブカンプーはまさに新潟芝・直1000メートルの申し子とも言うべき存在なのだ。良馬場条件に大きく狙ってみたい。
北海道競馬は、札幌に舞台を移しての牝馬重賞クイーンS。これまた好メンバーによる争いになった。
振り返ると大きく荒れることは少なく、人気どころが連絡みしている。それでも波乱で終わることもままあり、過去の傾向からすれば上り調子の3、4歳馬が優勢で、そのいずれかを中心視して流すのが馬券の筋ということだろうか。
そこで狙ってみたいのは、まだまだ伸びしろ十分とみられるフィニフティだ。準オープンの身だが、力量からこの顔ぶれに伍しても楽に通用していい。
前走の五稜郭S(函館芝2000メートル)は13着。といっても勝馬との差はコンマ6秒だった。2カ月ぶりの実戦でプラス16キロと重め残りだったことを思えば、巻き返しは大いに可能と見ていいだろう。
休み明けを一度使われたことで、この中間は大幅に良化。馬体も締まって実にいい雰囲気にある。ならば変わり身を期待していいのではないか。
15年天皇賞・秋2着、17年大阪杯2着など、数々のGIで活躍したステファノス(GIIオールカマー)の全妹。このメンバーでも互角に渡り合っていい。