徹底的に稽古して作り込むから、基本的に失敗はなかった。それでもトラブルやケガはあった。ボクの場合は「大爆笑」の「棺事件」。ボクが棺に入って待機。そこへ死んだ人とは関係がない、知らない人が入ってくる。それが小松政夫さん。「このたびは‥‥」なんて言いながら飲み食いする。いかりやさんは女房役で「あんた、○○さんが来てくれたわよ」と言ってトントンと棺を叩くと、中に待機していたボクが「そんなの知らんぞ」と出て行くことになっていた。なのに寒い中で座布団がポカポカ暖かいし、稽古を何回もやるから疲れていびきをかいて寝ちゃったの。
その時、いかりやさんは「本当に寝ちゃってるよ」と言うわけ。いかりやさんはそのほうがおもしろいからそのまま放送しようと言ったんだけど、ディレクターが撮り直ししてその時の放送では使わず、特番で寝ているほうを放送しました。
「全員集合」では停電した事件もあった。前半のコントの時かな。会場には電源車が横付けしているからステージはすぐに復活して、客席だけが真っ暗になっちゃった。なんとかその場を取り繕おうとしているのはいかりやさんだけで、加藤なんか懐中電灯を手にして喜んじゃって遊んでるわけ。というのも、電気がつかないままなら次週はその時のコントを使える、という思いもあったから。でも、しばらくしたら「あ、ついちゃった」ってガッカリ。それぐらい、毎週コントを作るのは大変だった。
荒井さんはおもしろい人でしたね。いかりやさんより3歳上だから、上からモノを言われて時々キレる。あのまんま「冗談じゃないよ」なんてフテくされたりして。でも、大人の対応でね。爆笑だったのは、地方公演に行った時かな。ステージで釘を引っかけたり、音響用の反響板にぶつかって額を切ったり。いつもやっている鉢巻きが「日の丸」になったこともありました。
ブータンはアキレス腱を切ったことがあった。ボクは「全員集合」で体操コーナーを任されていて、トランポリンで2時間は稽古をするので、ブータンにその前に準備運動をするように言ったんです。なのに、座っているだけで何もしない。それで乗ろうとしたら、ブチッと大きな音がして。「どうした?」と言ったらアキレス腱が切れていて、もうあとの祭りです。ゲストの方にもたくさん出てもらったけど、モットーはケガをさせないこと。それだけは心がけていました。
「全員集合」の名物に屋台崩しがあるけど、あれでケガとか事故はまったくなかったですね。台本を作る時にセットまで考え、これなら安全というものにするわけだから。トラブルが起きないために3回も4回もリハをやっていた。本番で大失態がなかったのはそういう理由です。
峯田淳(コラムニスト)