「全員集合」にはとにかく各界の大御所クラスが毎回、ゲストで出てくれました。女性では和田アキ子さん、由紀さおりさん、小柳ルミ子さん。男性では三船敏郎さんや若山富三郎さんにも出てもらいました。やはり視聴率が高かったのがいちばんの理由でしょう。最初は断られることもあったみたいだけど、後半は出たがっていた人が多かったと思う。出ると一緒になって笑いを作るので、視聴者には親しみが湧く。それがよかった。
三船さんが出演した時は立ち回りをカッコよく決めて、退場する時にヒゲダンスを踊ってくれた。大爆笑でしたね。
若山さんの時は学校コントをやった。若山さんが生徒としてボクの前に座ったんだけど、先生が話をしている最中にボクのほうを向いて、「後ろにいる女の子がかわいいね」って本番でいきなり言うの。「前を向いてください」と言ってもダメで、そんなハプニングにも生放送に慣れていたから対処できたんです。
ボクの印象に残っているゲストは藤圭子さん。後半のショートコント、ボクの体操コーナーでコーチと生徒という設定。圭子ちゃんは無表情で、嫌とも言わずに何でもやってくれて。一生懸命なのかそうじゃないのかもわからないけど、コントなんかやるのを誰も見たことがなかったから、それだけでおもしろかったんだね。
ドリフの笑いの基本は学校コントに限らず、メンバーの順番、序列が決められていたこと。学校コントなら先生、デキのいい生徒、反発する生徒、先生にゴマをする生徒、デキの悪い生徒といった上下関係を作る。家庭コントなら母ちゃんがいて長男、次男、三男、末っ子がいる。戦争コントなら隊長、軍曹、一等兵、二等兵‥‥といった具合に。
いかりやさんを長として、あとは年の順。荒井さんはいかりやさんより上だけど、高木さんは下、ボクと加藤はいかりやさんより10歳、12歳下で志村は20歳下。最初は上下10歳違いだったのが、志村が入って20歳差になった。
ボクは上から3番目だから、ゴマをすって助かる生徒とか、家庭なら三男坊の役回りが多かった。年が近くなくて上下関係をみんな心得ていたから、その序列で何か問題になったということはなかったね。そして、いかりやさんが決めたことをみんなでやる。
意外かもしれないけど、いかりやさんは、できないことを無理強いするようなことはなかった。「できることをやればいい」と常に言っていた。これはいかりやさんの名言だったと、ボクは思っています。
峯田淳(コラムニスト)