巨人がリーグ優勝を決め、原監督が胴上げで宙を舞った9月21日の横浜では、試合の開始に先立ってもうひとりの「名将」が怪気炎を上げていた。予定時間を大幅にオーバーして、ポストシーズンの展望からレジェンド選手との交流までを語り尽くした「オレ流講演会」の模様を潜入レポートする!!
「今日も週刊誌やらマスコミの人がいればね、落合がどこの球団が誰を獲るとか(言ったと書くんだろう)。今年は野球も終わりですから。だって何日か後にはジャイアンツ優勝するでしょ?」
まさにその数時間後に巨人優勝が決定、原監督の涙の胴上げがあったわけだが、落合博満元中日GM(65)の今年2回目となる横浜市内での講演会は、そんなふうに「ペナント終了後」の話題から始まった。落合氏はぶっきらぼうな調子でこう続ける。
「ドラフトで誰に行くって言われても、わかんないです。見てない。誰を獲るかというのも、チーム事情を見てどうするかというだけのこと」
期待させておいて裏切る。トークにおいてもさすがはオレ流だ。一転、CS(クライマックスシリーズ)から日本シリーズのポストシーズンに話題が及ぶと、明言は避けつつ、変わらぬ鋭い分析を忍ばせたワザを繰り出す。
「どうなるかわかりません。今年はどのチームもあまりにも連敗が多い。逆にいい状態の山がここに来れば、1位のチームも食っちゃうんじゃないのかな。どこも軸になるピッチャーがいないんです。せいぜい千賀(ソフトバンク)か。楽天は誰? 西武は? 名前が出てこない。セ・リーグはどこが勝つかな~。巨人ファンの人は耳塞いどいてね。使えるピッチャー、ということでは横浜のほうが巨人よりいいかもしれない。こないだ今永(DeNA)が打たれたけど(9月19日に広島戦で4回7失点降板)、それがいい薬になることもある。ファーストステージを勝ち上がったら、横浜は怖い存在になる」
球史で唯一、三冠王を3度獲得する偉業を成し遂げた伝説の打者でも、短期決戦においては投手力の重要性を認識しているということだろう。この日は他にも、現代野球における投手のあり方について饒舌な語り口を見せた。
「今年のペナントを見ると、ピッチャーの頭数が足りない。我々の時代では考えられない現象が起きている。パ・リーグでは規定の投球イニング数に達するピッチャーが4人しかいないんですよ。セは9人かな(実際には9月27日時点で8人)。これは異常事態」
と、分業制が進み先発完投型の投手が激減したことを指して、断言はしないものの、しかし明らかに警鐘を鳴らしたのだ。