テリー 上田監督の作品は奥さんもスタッフとして参加しているんですね。
上田 そうですね、妻も映画監督(ふくだみゆき)なんですが、今回は監督補と宣伝デザインを担当しています。「カメ止め」や今回の映画のポスターも妻が描いているんです。
テリー タイトルバックのアニメも奥さんでしょう。斬新でおもしろい絵だな、と思っていたんです。
上田 ありがとうございます。それを聞いたら、すごく喜ぶと思います。
テリー 伊丹十三監督と宮本信子さんの関係みたいだね。二人三脚でこれからも映画を作っていくのかな。
上田 ええ、そんなふうになれたらいいですけどね。そのためにも、今回の映画は大事なんです。
テリー 見れば、1作目がまぐれ当たりじゃなかったんだということはわかるからね。やっぱり制作時、プレッシャーは感じていた?
上田 僕、SNSでエゴサーチとかけっこうしちゃうタイプなので、すごい期待の声があれば「一発屋だろう」なんていう悪口もあるし、両極端のプレッシャーがすごくて、本当に倒れそうでしたね。だから、それを脚本に生かしたんですよ。
テリー あ、緊張すると気絶しちゃうっていう主人公の設定だ。詐欺の話もそうだけど、タダでは転ばないねェ(笑)。じゃあ、そのプレッシャーはどう乗り越えたの。
上田 「カメ止め」の奇跡的な大ヒットは、やっぱりいろんな運が重なっての奇跡なんですよ。もちろん作品には自信を持っていますけど、あれはまったくの別物なんだ、と。あと、そもそもあのヒットがなければ自分はこんなノイローゼを経験することもできなかったんだ、とポジティブに考えるようにしました。
テリー なるほどね。
上田 テリーさんもこの業界に長くいらっしゃるじゃないですか。大ヒット作の次ってプレッシャーを感じませんか。
テリー そうだね、でも3本作れたらきっと平気になるよ。
上田 3本、ですか?
テリー うん。一発屋は困るけれども、3本世間に認められれば、あとは勢いでいける気がするんだよ。ほら、歌手だって3曲くらいヒットがあれば、そのあとずっと食べていけているじゃない。
上田 そうですね‥‥まずはそこを目指して頑張りたいと思います。
テリー またこれが大ヒットしたら、さらに作品の規模が大きくなって、「カメ止め」みたいな作品のコントロールは難しくなってくるかもしれないけれど、その辺の心配はないですか。
上田 できるだけ大きい流れには飲み込まれないように踏ん張りたいですね。インディーズの時はプロの意識を持って、メジャー映画の時はインディーズの魂を忘れずやりたい、と思っています。
テリー そうだね、結局は楽しんだ者勝ちだから。
上田 そういう意味では、「カメ止め」はゾンビ映画とバックステージもの、今回もヒーロー映画に「オーシャンズ11」みたいな詐欺師が出てくるコンゲームなど、自分が好きなものをいっぱい詰め込んでいますからね。結果として撮っている自分がいちばん楽しんでいたのかもしれません。
テリー そうだよね。スパイ映画みたいなミッションとサスペンスも楽しめる。
上田 いろんなジャンルが1本にギュッと詰まった、おもちゃ箱みたいな映画を目指したので、ぜひこの作品でいろんな味を楽しんでいただけたらと思います。
テリー うん、最後までビックリが続くから、読者の皆さん、ぜひ劇場へ!
◆テリーからひと言
世の中を斜めに見ないで、クリエイターとして素直な気持ちを持っている。こういう人は潰れないと思う。苦しい時もあるかもしれないけど大丈夫。映画の大ヒット、祈っていますよ!