ラジオ、映画からテレビへと娯楽の主役が移ろっても、人々が求めるものは変わらなかった。そう、常に“笑い”を欲していたのだ。腹を抱えて笑わせてくれた、あの「昭和ギャグ」が生み落とされた瞬間に本誌が迫る!
国民の誰もが知っていて、かつ大爆笑した「昭和ギャグ」のベスト30を決定するために、本誌は緊急アンケートを実施した。そのランキング結果とともに隠された誕生秘話を明かす!
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本誌が行った調査は、北海道から沖縄まで全国を11の地区に分け、40代以上の男女1000人に対して、インターネットによる投票。その結果、全地域で1位となり、ブッチぎったのは谷啓の「ガチョーン」だ。「いまだに、ショックを受けた時やビックリした時に使っている人がいる」(52歳・会社員)というのだから、まさに「国宝級」のギャグと言えるだろう。
生前、谷が本誌のインタビューで、「ワケわかんない言葉を使っているうちにできちゃった」と語っている。ふだんから、「ガチョーン」「ビローン」など擬音を口癖でよく使っていたという。
ちなみに、今回の調査で「ビローン」と記した人もわずかながら存在した。
現在、谷が麻雀牌をツモる時に「ガチョーン」を使用していたという説が有力となっている。
当初は「ガチョン」と伸ばさなかった。それが「ガチョーン」となり、それに伴いテレビカメラがヨリとヒキを繰り返し、視覚効果でインパクトを与えるようになったという。
「息子が幼い頃、このギャグをやって見せたらバカウケ。以来、毎日、ガチョ~~ンしてました」(66歳・主婦)
こうした年配者の1票だけでなく、
「先生に怒られた時に、おどけてガチョーンとやったら、よけい怒られた」(48歳・自営業)
比較的、若い世代からも支持を集めた。これも、谷が生涯「ガチョーン」をやり続けたことが大きい。
続いて、2位はビートたけしの「コマネチ」。76年のモントリオール五輪で、当時14歳だったルーマニアの女子体操選手のナディア・コマネチの名前がもとになっているのは有名だ。
80年代初頭の漫才ブームで一躍、時の人となったたけしの代名詞的なギャグでもある。
「中学時代、学校で皆マネしたものだ」(46歳・技術職)
当時のブームの隆盛をまざまざと思い知る意見がある一方で、
「あれで性に目覚めた。女子のレオタードや水着の股の部分を見るようになった」(42歳・漁業)
笑いよりもエロスの記憶としてとどめているという意見もあった。
11年10月にBS番組でたけしとコマネチが共演し、2人で「コマネチ」とかましてくれた。
3位は、赤塚不二夫氏の漫画「おそ松くん」の登場人物、イヤミが行う「シェー」がランクインした。
出っ歯でオカッパ頭のキャラで、「ざんす」が口癖であったことから、トニー谷がモデルと言われたが、これは間違いのようだ。
詳しくは、後章の記事を読んでいただくとして、その語源には諸説ある。赤塚氏の担当編集者が歯医者帰りに原稿が完成していないことを知り、「ヒェー」と驚きの声を上げたが、前歯がなく空気が抜けて「シェー」となった。また、フランス語や中国語に由来を求める説も存在している。
諸説飛び交うが、その影響力は強大だった。
「子供と妻と3人で親子並んで、このポーズで撮った写真がある。当時を懐かしく思いながら、明日への活力が湧いてくる」(63歳・薬剤師)
さらに、4位にランクインしたのが、植木等の「オヨビでない」だった。
植木の付き人をしていた小松政夫が、生放送の「シャボン玉ホリデー」(日本テレビ)の最中、誤って「出番です」と告げて、植木が登場してしまった際に発したアドリブが発端と言われてきた。
しかし、小松自身が植木の「お別れの会」での弔辞でこう述べて、アドリブ説を覆したのだ。
「私はオヤジさんの出番を間違えるようなことはしていないと思うのです。事実でなくても、自分のため(小松を売り出すため)に作ってくれたエピソードであり、本当に感謝している」
そして、多くの人々にさまざまな思い出を残している。
「死んだ親父が植木さんのファンで、幼い頃によく聞かされた。昭和という古きよき時代を思い起こさせてくれる」48歳・会社員)
ギャグは笑いだでなく、郷愁さえ感じさせるのだ。