今季ゼロ勝、傷心の阪神・藤浪晋太郎が科学的トレーニングに「最後の望み」を賭けた。
秋季キャンプでは山本昌臨時コーチの助言と指導によって「復活」の手応えも掴んだように見えたが、その成果は表れなかった。復活のお披露目となるはずだった紅白戦で、2回3安打2四球3失点…。暴投まで記録してしまい、翌日は投手コーチ総出でブルペン投球を指導していた。
「矢野燿大監督も『方向性は間違っていない』とかばってはいましたが…」(在阪記者)
そんな負のスパイラルから抜け出せない藤浪がすがったのが、科学的トレーニングだ。
「今季途中、インディアンズからレッズに移籍し、トータルで11勝を挙げたトレバー・バウアーが心酔していることでも有名です。米・シアトルに本部を構えるトレーニングジムなんですが、千葉ロッテも今オフ、コーチと若手投手を現地に派遣しています」(前出・在阪記者)
藤浪はその「ドライブラインベースボール」なるトレーニング組織に連絡を取り、沖縄での集中レッスンに参加することになった。
どんなトレーニングをプロのピッチャーたちに指導しているのかというと、通常よりも重いボールを投げさせている。そして全身にセンサーを装着して動作解析も行い、各自の体に適した投球フォームを勧めているそうだ。
その効果は2018年にバウアーが急成長したことでも立証済み。しかし、
「バウアーは“物理オタク”で、周りの空気が読めないところもあります。インディアンズは選手の自由、独自の調整法を認める寛大なチーム。他球団だったら、バウアーの調整は許されなかったでしょう」(米国人ライター)
と、批判的な指摘もあった。もっとも、千葉ロッテも現地にコーチを派遣したくらいだから、興味深い指導がされているのは間違いないはずだ。
また、藤浪も理論派だ。練習量を多くして自分を追い込んでいくのではなく、体を動かす前に「この練習の意義は?」と考えるタイプだ。物理オタクのバウアー同様、データで解説する指導が合っているのかもしれない。ただ、専門家の見方は厳しい。
「いや、自分が積み重ねてきたもの、今、取り組んでいる練習に自信が持てないから、新しいことをやりたがるんです。復活したいという気持ちはわかります。でも、来年はプロ8年目。同級生の大谷翔平、広島・鈴木誠也が一人前になっている中で、新しいことばかりに目を奪われ、結果がついてこないという繰り返しにならなければいいんですが…」(前出・在阪記者)
理論派であることと、プロで一人前のオトナになることは違うようだ。来春キャンプで投手コーチが新たな助言をしたら、また迷い始めるのでは?そうなったら矢野監督も藤浪にどんな言葉を掛けてやればいいのか、いよいよ戸惑ってしまうだろう。ここは、一度決めた練習法ならじっくりと取り組み、復活を遂げてほしいものだ。
(スポーツライター・飯山満)