こうなれば、矢野監督の気力体力と同様、チームの士気がダダ下がりの一途を辿るのは仕方のないところ。今やベンチ内は空中分解の危機に瀕している。
「もともと、昨年後半から坂本誠志郎(28)や小野寺暖(24)などお気に入りの選手を重用する“エコ贔屓采配”による不満から、矢野監督の求心力は地に落ちていました。そこに拍車をかけたのが春季キャンプ前日の“退任宣言”です。ほとんどの選手の反応は驚き半分、『何言ってんだ?』という呆れた様子でした。とても『監督を胴上げしたい』という雰囲気になるはずもありません」(球団関係者)
そんなゲンナリムードに拍車をかけたのが、昨季最多勝の青柳晃洋(28)のコロナ離脱だった。
「開幕投手に内定していただけに、首脳陣は先発ローテーションの再整備にバタつきました。しかも2軍監督時代から目をかけていた“矢野シンパ”で、『監督のために戦う』と意気込んでいた数少ない理解者だった。そのため、監督は想像以上の精神的ショックを受けていたようです」(球団関係者)
それでもその開幕戦は、急遽任された藤浪晋太郎(28)が、昨季Vのヤクルト打線を相手に7回3失点の好投。幸先よく今季初勝利に漕ぎつけたいところだったが、悪夢の大炎上劇が待ち受けていた。
「齋藤友貴哉(27)が3点、岩崎優(30)が1点、新守護神のケラー(28)が3点を奪われて、最大得点差7点、藤浪降板時点までに蓄えていた5点のリードが水泡に帰する展開になってしまった。中でも大誤算はケラーで、次の登板機会でもリリーフに失敗。一度もセーブを記録することなく、たった2試合で見切りをつけられ抹消されてしまいました。結局、昨オフに放出したスアレス(31)の抜けた穴が埋められずにいる」(スポーツ紙デスク)
そもそもケラーに対する矢野監督の評価は、決して芳しいものではなかった。球団関係者が明かす。
「元巨人・マイコラス級の直球とカーブを持つリリーバーと評されていましたが、完全に国際スカウトが下駄を履かせた情報でした。実際に投球を目にした矢野監督は、リリース時の球離れの早さとカーブの曲がりの小ささに難色を示していたようです。本当は岩崎か、4年目の湯浅京己(22)のいずれかを抑えに据える構想だったそうです。今季限りで去る身、自身の責任を回避すべく、土壇場でフロントの意向に沿っただけなのかもしれません」
後悔先に立たず。結果のみが全てのプロ球界で、もはや「たられば」は禁句である。
それでもシーズン序盤から光明を見出せない矢野監督にエールを送るのは、阪神OBの川尻哲郎氏だ。
「今こそ、ベンチの前に出てきて選手を鼓舞するスタイルに立ち返るべきです。勝利に飢えているファンも“矢野ガッツ”を待っているはず。まだまだ、この先のシーズンは長いだけに『ここからやったるわ』という気概を持って巻き返してほしい」
シーズンは始まったばかり。矢野阪神の奇跡的な逆襲劇に期待したいのだが‥‥。