早くも阪神・西純矢の今後を心配する声が出始めている。
5月18日のヤクルト戦(神宮)で「8番・投手」としてスタメン出場し、今季2勝目をプロ初完投で飾っただけではない。打っても2回にプロ1号となる2ランをレフトスタンドに叩き込んだ。エンゼルス・大谷翔平ばりの「二刀流」の活躍に、虎党のボルテージは上がりに上がっている。
今季の阪神は開幕から低迷。最下位街道を驀進しているだけに、盛り上がるのも仕方のないこと。だがこれは、危険な兆候であるという。
球界OBが、不安の声を上げる。
「阪神の場合、少し活躍しただけで、球団も関西マスコミもすぐに特別扱いを始める。それで勘違いして伸び悩む選手が過去に何人もいた。高校生ならなおさらだ」
最近ではその典型的な例が、藤浪晋太郎である。藤浪は入団1年目の2013年、高卒1年目ながら10勝6敗、防御率2.27と大活躍。セ・リーグから連盟特別表彰として、巨人・菅野智之と共に新人特別賞を受けた。14、15年も2ケタ勝利を挙げたが、その後は伸び悩んでいる。
その大きな要因が、球団の甘やかし体質にあるという。在阪スポーツ紙デスクが言う。
「ここ最近はフロントの特別扱いを受けて、現場の首脳陣も特別扱いする傾向にある。低迷していた時期に、首脳陣は中継ぎや敗戦処理で再起を図ろうとしていた。ところが藤浪が『先発にこだわりたい』と難色を示したため、いつしか立ち消えになった」
本来なら、選手起用は矢野燿大監督の専権事項である。だが、一個人の要求が現場でも通ってしまう体質が、阪神という球団にはある。亡くなった野村克也氏も、
「球団もすぐに人気選手個人の肩を持つ。マスコミもすぐに選手側に立ち、何かあると監督が悪いと叩きにくる。阪神の監督をやらなければよかった」
とボヤいていた。
藤浪も西も性格が良く、好青年だと言われている。だが、過大評価が続けば、勘違いも生まれてくる。
西が逸材であることは事実だろう。それだけに、育て方を間違ってはならない。
(阿部勝彦)