またひとり、昭和を代表する豪胆な俳優が逝った。その名は梅宮辰夫──。12月12日に81年の生涯を終えたが、アサ芸だけが知る無頼な秘話を追悼公開しよう!
映画監督・ライターの杉作J太郎氏は、何度も取材を重ねた俳優、そして人間・梅宮辰夫の魅力をこう語る。
「一見サラッと軽い印象ですけれど、スターとしての誇りと自負を誰よりも強く抱えている人でしたね」
〈広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことは一遍もないんでぇ〉
スゴむ武田明役の小林旭に対し、神戸の顔役・岩井信一に扮した梅宮がこう切り返す。
〈よおし、おんどれらも吐いたツバ飲まんとけよ〉
実録映画の傑作「仁義なき戦い 頂上作戦」(74年、東映)で見せた、シリーズ屈指の緊迫した場面だ。
ここで岩井組組長を演じる梅宮は、両の眉を剃り落とした異様な姿で、迫力を倍増させている。そのため、思わぬ余波があったとアサ芸に教えてくれた。
「娘のアンナが1歳とちょっとで、京都の撮影所から東京に戻ると、なついていたのがこの顔で抱っこしたらワンワン泣き出してね」
演じた岩井のモデルは、三代目山口組若頭、山健組の山本健一組長(82年没)で、梅宮とは浅からぬ因縁があったことも明かした。
「若い頃は歌でキャバレー営業をこなして、神戸の店に出ていたら若いヤクザに『親分に挨拶がない』ってどなられてね。連れて行かれた先が山健さん。何のことかわからなかったが頭を下げたら、そこからはかわいがってもらえた。岩井の役をやることになったら組の若頭に『しっかりやってくれよ』と激励もされたよ」
眉を剃り落としたのも、組長の風貌に合わせてのことだ。梅宮は「今の時代は問題あるかも」と前置きしながら、きっぱりと言った。
「ヤクザの役を演じるんだったら同じメシを食い、同じ酒を飲み、時には一緒にトルコ(ソープ)に行くような‥‥そんな“匂い”を吸収することも大事だったんだよ」
一方、青年時代の梅宮は「プレイボーイ」のイメージが強くつきまとった。「ひも」「ダニ」「かも」(すべて65年、東映)といった「夜の青春」シリーズ、「未亡人(ごけ)ごろしの帝王」(71年、東映)をはじめとした「帝王」シリーズなどの主演作で演じた、セックスで女を縛り貢がせるナンパ師像が世間に強く印象づけられたからだ。鶴田浩二主演作との併映ポスターには「男を泣かせる鶴田、女を泣かす梅宮」と、みごとな惹句が添えられていた。
これらの主演企画は、当時の梅宮の私生活に寄せて立ち上げられている。梅宮は、当時のモテぶりを「今の芸能界のスターの比じゃない」「常に彼女が10人以上いる」と豪語、「クラブのドアを開けると、店内のホステスみんなが他の客をほっぽって俺のところに集まった」のだという。
本命のホステスと店外デートの約束を取りつけたものの、目ざとく気配をキャッチした他のホステスにつけられてしまい、本命の部屋の中でホステスたちが一堂に会することに。ナルホド、これは並のモテ方ではない。
しかも、ゲイボーイからの人気も絶大だった。カルーセル麻紀も梅宮の大ファンで、劇場で歓声を上げていたという。