昨年末にNOAHを退団。古巣・全日本プロレスに闘いの場を求めた、秋山準(43)はさっそくチャンピオンカーニバルで初優勝を果たした。6.30両国国技館大会で諏訪魔の持つ三冠ヘビー級王座への挑戦も決定している。キャリア21年目を迎えた秋山は“新天地”で何を思っているのか。
武藤さんが作り上げた全日本プロレスは、僕らのいた頃とは別物かと思っていたのですが、上がってみたら凄く懐かしかった。
選手も全部変わっているのに、僕らの頃のようにファンの方のプロレスに対する見方が温かい。選手の個性も豊かで、いろんなプロレスがあり、それも僕らの頃に近い。KENSO選手、曙さん、船木誠勝選手から浜亮太選手まで。今まで開けてなかった引き出しを開けられるので、レスラー冥利に尽きますね。
船木さんとの試合、去年の三冠戦では、僕のほうから船木さんに近づいた。
この世界では大先輩ですが、プロレスに関しては、そんなに引き出しが多くはないというか、その引き出しだけで十分な方ですから、僕がそっちに行ったほうがおもしろいと思ったんです。
そしたら、試合がふだんとはまったく別物になった。掌底でクラッとさせられ、蹴りがしなって飛んできて、スネのいちばん硬いところで蹴ってくる。ピリピリとした空気感が刺激的でした。20年やってきて、まだそういう刺激をもらえたのがうれしかった。結果的に敗れてしまったので、チャンピオンカーニバルでは、僕のほうに引き寄せ、借りを返したけど、次、どうなるかまた楽しみです。
諏訪魔選手の持つナチュラルなパワーは、日本人でナンバーワンじゃないですか。相手がどんなに重心を落としても引っこ抜いてしまいますから。でも今度の三冠戦、僕は負ける気がしない。彼はいろんなことができるタイプではないので、自分のほうに持ってくるのが簡単なんです。試合ではそのへんを観ていただきたいですね。
全日本のリングに上がってみて、若い選手の中に、ここが足りないという部分も感じる。だから、僕がかつて全日本の先輩たちに、やってもらったことを、そういう選手たちに返すのが、全日本に来たという意味でもありますよね。
それが全日本の「王道プロレス」かと聞かれたら、返事には困りますが、ただ今でも馬場さんに教えられたものは全て僕の中に入っているので、試合をしながらそれを若い人たちにわかってもらう。上からガツンとやりますよ。
僕は、プロレスがいちばんうまいのは川田(利明)さんだと思っている。その川田さんにいちばんしごかれたのが僕です。やられながら、川田さんの感覚が、僕に身についていた。やられてやられて、やられながら受け継いだのが、えげつなさ。川田さんが、そのえげつなさを誰に伝えられたかといえば、天龍さんでしょう。
だから、えげつなさというのは、全日本の源流でもあるわけで、誰かに伝えなくてはならない。けど性格が悪くないと受け継げないので(笑)。そういう選手が現れるのを待ちますよ。
プロレスがうまいということであれば、新日本の中邑(真輔)選手も。タイミング、試合の感覚が凄くいい。トップに行ける人はみんなそうですけど、どんな展開でも食いついていける。例えば、全日本で真田(聖也)君なんかは、まだそれができない部分があって、試合をしていて「それ無理です」となっちゃう。でも中邑選手なら、逆に「秋山さん、だったらこれはどうですか」と来そうなんです。僕は、そういうのが楽しい。
ある意味、それもえげつなさですから。だから、全日本の若い選手が、そうなれるように、ガツンとやりますよ。可能性のある選手がたくさんいるから、その部分でも今、やりがいがありますよね。