街頭テレビの力道山や馬場、猪木‥‥、とかくプロレス界は古きよき時代ばかりが語られる。しかし、今を見てほしい。逆襲を開始した「21世紀プロレス」は、衝撃の伝説を作り続けているのである。
昨年1.4東京ドーム大会に凱旋帰国するや、翌月には瞬く間にIWGP王座を獲得。新日本プロレスのトップに駆け上がった「レインメーカー」ことオカダ・カズチカ(25)が本誌にもカネの雨を降らせるか。
「レインメーカーとは、おカネが雨のように降ってくるくらい、ビジネスで大成功するという意味。アメリカで耳にして、これいいなと思った。僕も会社全体にカネの雨を降らせる選手、強いのは当たり前で、格好よくて、お客さんも呼べる、全てがそろった選手になろうと。今どき、『凄い・強い・最強』なんて言っているのは、泥臭くて格好悪いですから。僕は外国人レスラーたちに、『稼げるから、WWEではなくニュージャパンに行きたい』と言わせたい。そのために、まずは東京ドームを超満員にして、カネの雨をバンバン降らせますよ」
オカダは03年、中学卒業と同時に闘龍門へ入門。メキシコでデビューしたのち、ライガーに勧誘され07年に新日本に入団した。あらためて新弟子生活を送ったあと、「バケモノになって帰ってくる」との言葉を残しアメリカ武者修行へ。2年間のアメリカ生活がオカダの素質を開花させた。
「アメリカの団体は、お客さんの数ではなく、視聴率との勝負ですから、一般視聴者を意識した自分の“売り”が求められる。コーナーに上がるにも、カメラのあるほうに上がらなくてはいけなくて、そのカメラの前で何を見せられるか。そのことをいろいろな団体の試合を見て、考える時間をたくさん持てたのが収穫でした。考えたうえで、個性の違う選手たちと数多く闘うことでプロレスのリズムを覚え、自分のスタイルも見えてきた」
原点回帰とも言われるオカダのオーソドックスなプロレスはこの時誕生した。
オカダのプロレスは、初めて観る人にもわかりやすいだけでなく、アントニオ猪木を見て育った世代にも説得力があり、一度離れたファン層をもう一度会場へと足を運ばせている。
「でも僕は、猪木さんに会ったこともなくて、まったく影響は受けてないんですけど(苦笑)。今のスタイルは、自分が疲れない、ケガしない闘い方を考えていたら、自然とこうなった。“売り”として、オーソドックスな技を派手に見せられればいいかなと思った。帰国する半年前に、新日本のアメリカツアーがあり、そこで新日トップの選手と対戦して、負けたけど確信したんです。『一発で獲れる』と。この程度の力量なら、ドームまでまだ時間があるから間に合う。相手が誰であっても、自分の思い描く試合をすれば負けることはない」
その言葉どおり、2月に棚橋弘至に挑戦した試合では、大方の予想を覆し、オカダが異名と同名のフィニッシュホールド・レインメーカーで勝利。完成度の高い技と試合内容に、試合前のブーイングは歓声に変わり、一夜にして新日本の中心人物となった。
「周囲は驚いていたようですけど、当然の結果。レベルが違うんです。当時24歳。よく『その若さで』と言われましたが、24歳でも遅いくらいですよ。僕よりも若くて、僕みたいな存在が出てこないと。僕だけ強かったら衰退してしまう。僕より若い選手にどんどん台頭してきてほしいし、先輩方には、もっと努力してほしい。僕は、どんどん上のレベルに行っちゃいますけどね」
1度陥落するも、今年4月に棚橋から王座を奪還。鈴木みのるを破り初防衛。6.22大阪では、真壁刀義とのタイトルマッチが決定している。
「真壁さんにはバラエティ番組に出演して、スイーツだけでなく、しっかり試合の宣伝もしていただきたい。試合では勝てないのですから、たくさんのお客さんを会場に運んでもらいたいですね。そしたら真壁さんでは満足できないお客さんを、僕が満足させてあげます。結果、僕が降らせたカネの雨が、あなたのギャラになるんですから、宣伝よろしくお願いしますよ」