昨年2月、森さんの死は労災認定された。過労死であると判断されたのだ。
しかし、この労災認定が報じられると、ワタミは〈報道されている勤務状況について、当社の認識と異なっておりますので、今回の決定は遺憾であります〉と声明を発表。渡邉氏もツイッターで〈労務管理できていなかったとの認識はありません〉とつぶやき、森さんの死への責任を果たそうとはしていない。
そのため、遺族は森さんの死を「殺人事件」と断言している。「誰が、何が、殺したのか」が明確にならないかぎり、「殺人犯が野放し状態にある」と捉えているのだ。まずは森さんの労働実態の解明を求める遺族側と、先に金銭的解決を目指すワタミ側の和解交渉は不発のまま、進展を見せない。
そして、遺族は昨年9月に、労働組合の協力を得て、渡邉氏らに対して当事者同士の協議を申し入れた。
その文書にはこんな遺族の思いがつづられている。
〈朝起きるのがつらくなりました。起きれば、娘のいない1日を生きなければなりません。来る日も、来る日も娘は墜落します。6月12日は前夜から朝まで雨で、雨のなか、眠いのに、眠りたいのに眠れない娘は、さまよい歩いています。墜落し、雨に濡れたままアスファルトの上に、娘は横になったままです〉
置き去りにされた遺族の思いを渡邉氏が受け止めることはなかった。
ワタミ側は当事者同士の協議を拒み、簡易裁判所の調停委員会へと持ち込んだ。現在、遺族側の質問に対し、ワタミ側の代理人(弁護士)から2度の回答を得た。そして、遺族は再々質問書を提出し、3回目の回答を待っている最中だという。
「ワタミは、労災の責任を認めない一方、お金を支払うといいます。『責任を認めないまま金を早く支払って終わりにしたい』と思ったのでしょうが、調停委員会に申し立てた以上、質問に答えなければならない。調停委員会という公の場が、私たちに味方してくれています」(遺族)
しかし、ワタミ側からの回答は木で鼻をくくったような回答が多い。「真摯に答える」とした前提とはかけ離れ、不誠実にさえ映る。