社会問題化する「ブラック企業」の象徴として名を知られる「ワタミ」。各所で展開されたネガティブキャンペーンのせいか、創業者・渡邉美樹氏は先の参院選で薄氷を踏むギリギリ当選だった。そして今、かねてからブラック企業撲滅をうたう「ワタミキラー」の追及の手が、いよいよ核心に迫ろうとしている。
トップ当選するのではないか、とまで言われていた渡邉美樹氏(53)に当選確実が伝えられたのは、投票日翌日の午前3時半過ぎだった。当選した自民党比例代表候補18人のうち16番目の得票数という「意外な」結果。やはり「ブラック企業を作った男」というイメージのせいなのだろう。
本誌はかねてから、渡邉氏を創業者として外食チェーン、老人介護施設などを展開する「ワタミ」の反省なきブラック企業体質を批判。入社2カ月で過労自殺に追い込まれ、労災認定された26歳の女性社員の遺族の怒りとともに、「365日24時間死ぬまで働け」をキャッチフレーズとした異常な労働実態を白日の下にさらけ出してきた。
有識者らが主催する「ブラック企業大賞」では昨年、ネット投票1位の「市民賞」を授与され、今年もノミネート8社の中で70%以上の得票を維持する独走ぶりである。
そうした逆風が渡邉氏の選挙活動をジワジワと不利な情勢に変えていったのだが、その選挙戦中、とある「号外」が配られた。
〈日本共産党が追及第2弾ブラック企業を取り締まれと国会で追及ユニクロに続き、ワタミの長時間労働を告発〉
デカデカとタイトルを打たれた新聞「東京民報」。日本共産党の機関紙といえば「しんぶん赤旗」だが、共産党の東京委員会が母体となって発行しているのが「東京民報」で、いわば準機関紙的な媒体である。
この号外には、共産党議員が参院厚生労働委員会でワタミの名前をあげ、そのブラックぶりについて質問したこと、党の「雇用と就活対策室」にワタミ元社員男性から告発があったこと、そしてブラック企業根絶への提言などが書かれている。
6月18日の参院厚生労働委員会。質問に立った共産党・田村智子参院議員(48)はこう斬り込んだ。
「長時間労働で若者を使い捨てるブラック企業が話題になっているだけに、その具体的な事例についても1点、指摘をしたいんです。居酒屋チェーン『ワタミ』の創業者、渡邉美樹氏が自身の公式ホームページで『ワタミはブラック企業ではない』と述べています。その中で『時間外労働は月平均45時間までと決め、昨年は月平均38.1時間だから問題ない』というふうに言ってるんですね。でも大臣告示は平均45時間じゃないですよ。上限月45時間を超えちゃいけないといっているんです。月38時間だったら、これ12倍すると年間456時間ですよ。大臣告示を100時間近く上回る。これはですね、ホームページで大臣告示をゆがめて、長時間労働を開き直っている。厚労省として指導が必要だと思いますけど、いかがでしょうか」
◆アサヒ芸能7/30発売(8/8号)より