中国を中心に猛威を振るい、1000万人都市の武漢を前代未聞の封鎖に追い込んだ新型コロナウイルス。1月30日付の日本経済新聞によると、28日には中国国内線の運航便数が通常の2割減になったという。
1月27日には香港大学医学院の院長が、感染のピークを迎えるのは4~5月になるとの予測を発表。減少するのは6月ごろからとの見通しを示している。これで大きな影響を受けるのが旅行業界で、とりわけ中国の航空業界だというのだ。エアライン事情に詳しいトラベルライターが指摘する。
「かつては世界のメガキャリアと言えば、欧米の大手エアラインと相場が決まっていたもの。それが現在ではBAやルフトハンザ、エールフランスといったヨーロッパの大手が提供座席数で世界ベストテンにも入っていないのです。なにより驚くのは中国系エアラインの急成長で、19年の統計によると中国南方航空が1億3197万席で6位、中国東方航空が1億2291万席で7位、そして中国国際航空が9053万席で10位となっており、中国大手3社はすべてベストテン入りを果たしています。この3社がコロナウイルスによる影響をもろに被った場合、業界の勢力図に大きな変化が生まれる可能性は十分にありますね」
さすがに上位4社は米系エアラインが占めているものの、東アジアや東南アジアではほかに全日空が14位にランクインしているのが目立つ程度。いまやアジアの航空市場をリードしているのは中国系エアラインなのである。
「中国系の3社だけで保有機材は1540機にも及び、ANAとJALを合算した541機に比べると、実に3倍弱にも及びます。これらの機材で旺盛な国内線需要を満たしているほか、年間1億3400万人(19年統計)にもおよぶ中国人の海外旅行を支えてきました。しかし現在、国内旅行と海外旅行の両方で団体旅行が禁止され、その解除時期は未定。たとえ旅行自体は解禁されてもコロナウイルス感染者が増えれば旅行どころではなくなるのは確実です。そうなった場合、中国系エアラインが海外市場に活路を見いだすものと見られています」(前出・トラベルライター)
国際線の割合が多い中国国際航空では日本市場向けに「往復9400円から」という特別セールを実施中。ウェブとアプリからの予約に適用される6%割引も、今年いっぱいに拡大されることとなった。それにつられて航空券相場も全体的に下がり気味だという。トラベルライターが続ける。
「今夏の欧米行き航空券を例にとると、肺炎騒動の前に比べて相場が1~2割ほど下がっています。北京や上海を経由しての欧米行きは所要時間が長くなるので避けられがちですが、直行便に比べて半額ともなれば、価格に敏感な消費者を引き寄せるはず。しかも旅行者減少の予測を受けて原油価格も弱含みとなっており、燃油サーチャージの値下げも視野に入ってきました。これでGWの海外旅行が不発に終わりでもしたら、航空券相場が暴落する可能性もあります。夏の海外旅行を計画している人たちは、今しばらく価格の推移を見守るのが吉のようです」
ともあれ旅行好きの人たちは、コロナウイルスの流行が夏までには収束することを祈ってやまないことだろう。
(金田麻有)