新型コロナウイルスが蔓延する中国の武漢市から、外国人が次々と脱出している。1月28日に第一便が帰国した日本に続き、アメリカでも政府の手配したチャーター便が29日に帰国。脱出民はカリフォルニア州の米軍基地に収容されている。
その脱出フライト。日本ではANAの旅客機をチャーターしていたが、アメリカではなんと貨物機がチャーターされたというのだ。飛行機事情に詳しいトラベルライターが解説する。
「アメリカ政府が手配したのは、米軍基地への物資輸送などを担うカリッタ・エアのB-747F貨物機です。床にはコンテナを転がすローラーが備え付けられており、窓はすべて撤去。立った乗客の頭くらいの高さに明かり取りの窓がいくつか設けられている程度で、飛行中は外の眺めを楽しむことはできません。ここにエコノミークラスの座席を臨時で取り付け、201人を運んだそうです。なお彼らは『乗客』ではなく『被輸送人員』扱いのため、旅客フライトなら乗客50人あたり1名以上が義務付けられる客室乗務員も搭乗していませんでした」
座席は各所からかき集められたのか、デザインはバラバラ。モニター付きの座席もあるものの画面は当然映らないため、十数時間のフライト中に映画や音楽を楽しむことは不可能だった。機内食とミネラルウォーターは用意されたものの、クーラーボックスに入っている食事を乗客が自分で取りに行くセルフサービス方式。しかも貨物室にはトイレがないため、客室前方を幕で仕切ったうえで簡易トイレを使っていた模様だ。
「米軍ではふだんから貨物機で兵員輸送も行いますが、その際のトイレは仕切りがなく丸見えで、それと似たような状況だったようです。パイロットや荷主の乗る2階キャビンにはトイレがあるものの、今回のフライトではキャビンと貨物室を結ぶドアは完全に閉鎖され、パイロットは武漢空港での駐機中もコックピットから一歩も出なかったとか。様々な貨物を運ぶことから空調システムがキャビンと貨物室で別系統となっており、パイロットへの感染を防げる仕様になっていたことが、同輸送機をチャーターする決め手になったのかもしれません」(前出・トラベルライター)
搭乗していた避難者によると、米本土に着陸した際には拍手が巻き起こったものの、感染を恐れてか誰一人として握手を交わす者はいなかったそうだ。
(金田麻有)=写真はイメージ=