和製大砲・村上宗隆の成長と山田哲人のトリプルスリーは両立しないかもしれない。
「村上は下半身の張りを訴え、二軍調整となりました。重傷ではないようです。開幕にギリギリ間に合うかどうか…」(スポーツ紙記者)
東京ヤクルトスワローズは今年も故障者に泣かされそうだ。第一号は黄金ルーキーの奥川恭伸。1月の新人自主トレで右肘の炎症を起こし、いきなりの別メニューとなり、今回の村上だ。さらに荒木貴裕、大下佑馬もコンディション不良で二軍調整となった。
しかし、山田とのトリプルスリーと村上の成長が両立しない理由は、故障ではない。村上は退団したバレンティンに代わって、4番に定着させる予定。高津臣吾新監督も村上を主砲として大きく育てていくつもりだが、「バレンティンとの違い」が山田の盗塁に影響してきそうなのだ。
ライバル球団のスコアラーがこう言う。
「バレンティンは巨漢でした。公称では体重100kgとなっていますが、それ以上あったと思います。その巨漢が空振りすると、バットが背中のほうまで回ってきて、キャッチャーはぶつかりそうになりました。だから、バレンティンが打席に立つ時、キャッチャーは通常よりも一歩後ろに下がっていたんですよ」
その「一歩後ろに下がること」が3番・山田の盗塁をサポートする形となっていたという。しかも、バレンティンは「山田が盗塁するまで待つ」こともできた。
ところが、新4番・村上が3番・山田が出塁した後に打席に立っても、キャッチャーはバレンティンの時のように後ろに下がる必要はない。さらに、甘い投球が来ても“盗塁をサポートするために見逃す”というバレンティンのような高度な芸当は、まだ若い村上にはまだできないだろう。
「本来、4番バッターが打席に立った時は、盗塁などは仕掛けず、好きに打たせるもの。バレンティンが特別だったんです」(前出・スコアラー)
ソフトバンクが高額な年俸を積んでバレンティンの獲得に動いた理由も、このへんにありそうだ。目に見えず、数字にも表れなかったバレンティンの「フォア・ザ・チーム」の姿勢。NPB通算288本塁打のバレンティンのすぐ前を打っていたことは、山田にとってもプラスになっていたはずだ。村上を中核に据える新打線が、山田の「4度目のトリプルスリー達成」にさえ影響を与えそうなのである。
(スポーツライター・飯山満)