3月も半ば。クラシックが間近に迫る中、そのトライアル戦を含めて今週は5つの重賞が組まれている。
トライアルというのは桜花賞のそれ、GIIフィリーズレビュー(3月15日、阪神、芝1400メートル)だが、当欄は中山牝馬Sと金鯱賞をメイン扱いとしたい。
3月14日の土曜日に行われる中山牝馬Sは、よく荒れるレースとして知られている。4歳以上の牝馬によるハンデ戦。ここを花道に繁殖入りを控えている馬も多く、どう転ぶか、難解な一戦であることは確かだ。
この重賞に馬単が導入されたのは03年。それ以降、これまでの17年間、その馬単での万馬券は7回(馬連5回)もある。1番人気馬は3勝(2着2回)、2番人気馬の勝ち馬は皆無(2着3回)で、1、2番人気馬同士で決着したのは、たった1回のみ。まさに牝馬同士の一戦らしく、波乱含みの重賞である。
となれば穴党の出番である。期待を込めたいのは、リュヌルージュだ。
休み明けの前走、2勝クラス(稲荷特別)を勝ち上がったばかり。ここは一気に相手が強くなり、楽な競馬は望めない。それでも狙ってみたいのは、素質は確かで、厩舎の期待が大きいからだ。
「緩さが抜け、ここにきて馬体がしっかりしてきた。前走を使われて、さらに良化。今までで最もいい状態ではないだろうか」
こう斉藤崇調教師をはじめ、厩舎スタッフが口をそろえるほど。確かに中間の稽古は実によく、1週前の追い切りもリズミカルで文句なしだった。
ならば1票投じる価値は十分だ。恐らくハンデは50~51キロ。この軽ハンデをもってすれば通用していいはずである。
母系は日本屈指の名門、セレタ系で、天皇賞を制した女傑クリヒデの流れをくむ名血。一族には活躍馬が多く、大駆けがあっても不思議はない。
もう1頭、穴馬として注目したいのは、ロフティフレーズだ。
こちらもまだ3勝クラス(準オープン)の身。しかし、相手なりに走る勝負強さと安定性が身上の馬なのだ。中山は〈2 2 0 2〉と相性がよく、1800メートルの距離はベスト。ハンデは52キロ止まりと思われるが、ならば食い込んでいい。要注意馬だ。
一方の金鯱賞は、GI大阪杯の前哨戦で顔ぶれもなかなか。見応え満点の一戦とみていい。
狙いは、ケイデンスコール。近3走は2桁着順が続いているが、前走の東京新聞杯は12着といっても勝ち馬との差はコンマ6秒。向こう正面で大きな不利を被ったのが痛かっただけにスムーズだったら──と惜しまれるが、それだけに今回は巻き返し可能とニラんでいる。
ここは休み明け3戦目ということもあり、状態は大幅に良化。中間の稽古の動きがすばらしく、1週前の追い切りも軽快かつリズミカルだった。
安田隆調教師も「いい時の雰囲気に近づいた。馬体に張りが出て、本来の姿に戻った」と、仕上がりのよさを強調する。
問題は、初めての距離になる2000メートル。しかし、以前と違って落ち着きが出てきており、折り合い面での不安は消えている。安田師も「距離は大丈夫」と心配はしていない。
母父はハーツクライで、近親に長丁場を得意としたフェイムゲーム(ダイヤモンドSを3度制覇)がいる血筋。血統的に見ても、距離が2000メートルに延びても不安はない。
しかも末脚がしっかりしており、直線の長い中京の馬場は合っている。一発があっていい。