今週、東西のメインは、ともにトライアルレース。1着馬に天皇賞・秋の優先出走権が与えられる中山の産経賞オールカマー(芝2200メートル)は、例年と比べて頭数が少なそうだが、むろんのこと、顔ぶれは悪くない。
この春、香港の国際GIクイーンエリザベス2世カップをレコードで制したウインブライトが、それ以来のレースとしてこの重賞を選んだ。
そして、18年の天皇賞・秋を勝利したレイデオロも同じくGI馬。前走の宝塚記念では、見せ場もなく5着に敗れ、期待を裏切ったが、こちらもそれ以来3カ月ぶりの競馬となる。
ともに見据えているのは天皇賞・秋(東京芝2000メートル)。ウインブライトにとっては、盾の芝2000メートルがベスト距離で、レイデオロは右回りに比べて左回りの東京コースを〈3 1 0 0〉と得意にしている。
むろん両馬とも勝つだけの力は十分持っているが、ともに背負う斤量が他馬より重く、そのあたりを考慮してみると、このオールカマーは本番への足慣らしと見るべきだろう。最後は脚を余して‥‥という可能性が高い。
ならばここを踏み台、飛躍の一戦と力を入れている馬に目を向けるのが筋というものではないだろうか。
期待を寄せてみたいのはそんな一頭、グレイルである。
新馬-重賞(GIII京都2歳S)を連勝。昨春はクラシック候補の1頭とみられながら、クラシック競走は【6】【14】【10】着と、期待に応えられないで終わった。能力は確かだが、体質的な弱さが抜け切れなかったからだ。
昨年12月の中日新聞杯(13着)のあとは、体調を崩して休養を余儀なくされることに。そして7カ月半ぶりの実戦となった今年初戦の前走・福島テレビオープンは6着。二線級相手に見せ場なく終わったのだから、ここは当然ながら評価は低いだろう。
が、穴党としては、そこがつけめ。まさに好都合である。
「まだこれからの馬で、3歳時に比べれば、ずいぶんとたくましくなった。今秋以降は楽しみだ」と、厩舎関係者も期待のほどを口にする。
なるほど、前走後は放牧でリフレッシュ。ここを目標にしっかりと調整されてきている。
「前走は久々で余裕残しの状態(前走比プラス16キロの馬体重)。足慣らしの一戦とみてもらって結構」(前出・厩舎関係者)というように、確かにこの中間は稽古の動き、雰囲気がまるで違うのだ。
毎週のように強めの追い切りを行っているのは、体質的な弱さが解消されたからこそ。1週前の追い切りも実にリズミカルで軽快だった。ならば強敵相手でも互角、またはそれ以上に渡り合っていい。
昨年の皐月賞は不向きな展開ながら、2着サンリヴァルとはコンマ3秒。秘めた力は確かで、その地力ある馬が素質開花近しとあっては、狙わない手はない。
ブラックホーク(スプリンターズS、安田記念)、ピンクカメオ(NHKマイルC)が近親にいて、血統的にも今後の活躍が見込める馬でもある。
馬単が導入された過去17年間、その馬単で万馬券になったのが3回(馬連は0回)と、大きく荒れることは少ない重賞だが、この間に1、2番人気馬でのワンツー決着は0回。こうしたデータからも、グレイルが有力勢の足をすくうことは十分考えられる。
昨年は休み明けながら同じコース、同じ距離で行われたセントライト記念を最速の上がり脚で3着している。右回りの中山コースは〈0 0 1 1〉だが、相性はいいとみるべきで、大きく狙ってみたい。