アメリカ進出を宣言しているお笑い芸人のウーマンラッシュアワー・村本大輔に、アメリカ事情を知る人たちからの批判が寄せられているという。
その村本は3月25日、政府や自治体が求める外出自粛やイベント自粛について〈自粛させたいなら保証の話からしましょうよ〉(文ママ)とツイート。店が潰れて自死したら、それはコロナではなく政治が人を殺したことになると主張し、〈コロナと政治、どっちが人を殺すのか〉と政府の動きを糾弾してみせた。そのツイートへの反論について、アメリカのエンタメ事情に詳しい芸能ライターが語る。
「様々なコンサートや演劇が開催中止になり、確かにエンタメ業界はかつてない苦境に見舞われています。業界関係者からは『政府は補償ひとつしない』との声もあがっており、村本はそれらの声を代弁した形ですが、彼が進出を予定しているアメリカでも、エンタメ業界に対する政府補償は現時点でないのが現実。何かにつけて諸外国と日本を比べたがる村本ですが、それならばアメリカのエンタメ界が今、どういう状況にあるのか、正しい情報を発信するのが先ではないでしょうか」
米エンタメ界の現状を顕著に表しているのが、3月20日に始まったニューヨーク州のロックダウンだという。アンドリュー・クオモ知事は必要不可欠な事業を除き、州内の全ての事務所や店舗を閉鎖させる知事令に署名。それを受けてブロードウェイのミュージカルも中断されることになった。そのブロードウェイでは基本的にすべての演者や関係者が補償を受けているという。
「ブロードウェイの経営者が俳優組合(ユニオン)と交わした合意によると、最初の1週間は契約で定められた最低給の1.5倍を限度として現在の給与を支給。続く2週間は最低給が支給され、その後は再開を予定している4月12日までは無給となるものの、医療保険や年金は保証されます。これらの補償は政府によるものではなく、組合に所属していない人には適用されません。そのため村本がアメリカに進出していた場合には、彼は適用外となるのです。それが契約というものであり、各種の組合が大きな力を持つ米エンタメ業界の実情と言えるでしょう」(前出・芸能ライター)
米エンタメ業界では村本のような外国人のコメディアンでも、実績を積めば組合に加入することが可能。組合員になるとテレビや映画に出演する道も開けるが、非組合員は場末の劇場でオーディションを受けるしかない仕組みになっている。
それに対して日本の芸能界には同様の組合がなく、ロックダウン時の補償なども存在しないのが実情だ。健保に関しては1万人以上の組合員が所属する東京芸能人国民健康保険組合などもあるが、休業補償を請け負う組織は、そもそも日本の芸能界にはないのである。
「組合がないからといって日本の芸能界がアメリカのエンタメ業界より劣るということはありません。しかし両国の仕組みの違いを無視して一方的に日本の現状を批判するのは、短絡的に過ぎるでしょう。もっとも村本は自分がそうした事情を知らないことを自覚したうえで、あえて“確信犯”として暴論をぶち上げる傾向もみられます。もしかすると、今回も単に政府に対する文句を言いたかっただけかもしれません」(前出・芸能ライター)
ツイッターのプロフィール欄には〈英語勉強してます〉と書いてある村本だが、アメリカのエンタメ事情についても今後勉強していく、ということか。
(金田麻有)