長い芸能生活で、「志村けん死亡説流布」や「インスタにアレの写真投稿説」などトンデモな事件も少なくない。だが、それでも、誰からも愛され続けたことは逝去後の芸能界、国民の反応からも明らかだ。芸能ライターが、そんな志村の人柄を表す逸話を語る。
「数年前に大阪のローカル番組で紹介されたエピソードなんですが、とある売れない若手芸人が志村に『娘が病気で‥‥』と300万円の金策をお願いしたんです。すると志村が『出世払いでいいから持ってけ』と、1000万円をポンと都合した。しかし、怪しんだ先輩芸人がその若手を問い詰めると、娘の病気がウソだとわかった。謝罪させるために若手を連れて、再び志村のもとを訪ねたのですが、事実を知った志村はこう言ったそうです。『なんだ、娘さん無事なの? よかったな、ホッとした‥‥。貸した金? どうでもいいよ。金は天下の回りものだ』って」
アッサリと1000万円を放出するあまりの器の大きさに、その若手も先輩芸人も感涙したという。アサ芸の取材でも、金銭への頓着が薄く、「稼いだ金は酒や女に使う」という信条を語っていたが、それにしてもあまりに豪快すぎる話だ。
最後に、毎年夏恒例となった舞台「志村魂」に、15年から出演を続けるタレントの麻美ゆまが、座長との思い出を振り返ってくれた。
「稽古中、ご自身がいちばん大変なのに、みんなを笑顔にするため、毎日違ったアドリブで笑わせてくれたり、お酒の席では『あそこのセリフはもっとこうしたほうがいいね』とアドバイスをくださったり。本当に優しい方でした。私も最初の年に、本番を控えて舞台袖でブルブル震えていると『人様に見てもらうんだから、緊張して当たり前なんだ。大丈夫だよ』と言っていただけて‥‥。今年の夏もご一緒できるのを楽しみにしていたので、今は正直言って受け止め切れていませんが、志村さんの『どんな時でも人を笑顔にする』という仕事への姿勢を私も受け継いでいきたいと思っています。心よりご冥福をお祈りいたします」
麻美同様に、誰もが「だいじょうぶだぁ」と帰還してくる姿を望んだが、それはかなわなかった。笑いを愛し、殉じた巨星に合掌──。