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木村拓也「広島時代の恩師が見抜いたスイッチヒッターの素質」

「球界のキムタク」こと木村拓也選手が、巨人軍のコーチに就任したばかりの春に突然死してから、早くも4年目のお盆を迎える。広島時代に木村選手をスイッチヒッターとして花開かせた恩師で、現在、野球評論家の山本一義氏(75)に話を聞いた。

 10年4月2日午後5時40分頃、広島との試合前のマツダスタジアム。本塁付近でシートノック中に突然、意識を失って転倒。くも膜下出血で、そのまま入院先の病院で7日に息を引き取った。

「『いい指導者になるな』と期待していたやさきでしたからね」(山本氏)

 あまりにも突然の死に、関係者・ファンは一様に声を失ったのだった。

 現役時代のキムタクは“ピッチャー以外はどこでも守れるうえに、スイッチヒッター”という球界屈指のユーティリティプレーヤーとして知られた。

 90年に捕手としてドラフト外で日本ハム入団。92年に俊足と強肩を買われて外野に転向する。そして94年オフに、交換トレードで広島に移籍。ここで打撃コーチの山本氏と出会う。ちなみに過去には、あの高橋慶彦氏をスイッチヒッターに育成していた。

「初めて木村を見た時は、体が小さいな(173センチ)という印象でした。キャッチャー、外野手というフレコミなんだけど、キャッチャーじゃつらいし、当時の広島の外野手には、金本知憲、前田智徳、緒方孝市という将来性のある3人がそろっていましたからね‥‥」

 ポジションはおのずと内野手へとしぼられていった。一方、打者としての育成法に関して、山本氏は考えを巡らせたという。

「身のこなしがすばしっこい。そのすばしっこさを生かして、いかに出塁していくか? それでスイッチヒッターはどうかと思って、本人に話したら、即答で『やりたい!』という返事でした」

 左打ちの練習を一からスタートさせることに、普通の選手は二の足を踏むそうだが、キムタクはみずから積極的に山本氏の提案を受け入れたのだ。

 広島に移って2年目の96年のオフ。山本氏のマンツーマン指導が始まった。

「教えてみたら、器用でしたね。(高橋)慶彦は練習量の多さでカバーしていましたが、木村はもっと器用なところを見せて、思ったより形が早く出来上がったですね。スイッチヒッターとしていちばん大事なことは、変化球でも打てるリズム、間合いを身につけることです。そのために木村の場合は、『ミックス練習』というのをよくさせました。どういう球種が来るかわからない状態で、ピッチャーに投げてもらって、それを打つ練習です」

 一方で、こうも語る。

「ただ、技術的なことはそんなに教えていないんです。むしろ、プロ野球の選手にはチームの一員として協力したり、励まし合ったりする人間関係が大切だ。チームに溶け込むことが、まず先だ、という話をよくしていましたね」

 翌97年のオープン戦で早くも木村は、スイッチヒッターとしてデビューし、結果を出していった。

「木村が亡くなったあと、巨人の選手たちが墓参りに行って涙を流していましたね。あれを見て、木村はジャイアンツの一員になっていたんだなと思って、ボクはうれしかったですね」

 キムタクの明るさと前向きな姿勢は、巨人の選手たちにも、心底愛されたのだった。

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