この作品では、未亡人(吉永)と妻子ある男(渡)が不倫関係に陥るのだが、なぜかベッドシーンが描かれていない。吉永は次作「長崎ぶらぶら節」(00年・東映)でも渡と共演するが、
「一緒の部屋で寝るけど何もない、というシーンがあります。渡は舞台挨拶時の幕間のインタビューで『今度(共演する時)はセックスだらけの映画にしたい』と言っていた」(中平氏)
かつて燃え上がった2人の関係を思い出しての「ラブコール」なのか。
渡との大恋愛を成就できなかった吉永の結婚は28歳の時。その相手が15歳上でバツイチのテレビディレクター・岡田太郎氏だったことで、サユリストと芸能マスコミは騒然となった。
当時、交際中の岡田氏との密会場所は、テレビ局近くの寿司店2階の座敷。そして中平氏は、封印されたエピソードを明かすのだ。
「小百合ちゃんは芸者役をやるようになると、日本舞踊を習うことにした。ところが梅丘の自宅から遠かったのと、遅くなって疲れた時のために三田にマンションを借り、寝泊まりすることがありました。そこへ岡田氏も引っ越してきた。このマンションには本館と別館があり、渡り廊下でつながっていましたが、一方の建物に小百合ちゃん、もう一方には岡田氏が住み‥‥つまりお互いの部屋を行き来する半同棲生活を送っていたわけです。両親にはバレないように極秘交際を続け、最後まで欺く形に。小百合ちゃんは手料理を持って岡田氏の部屋を訪問していました」
吉永はのちに遠藤周作氏との対談の場で「キミはマントの下にシチューを隠し持って行ったんだろう」と聞かれ、「ええ」と答えている。
岡田氏との結婚について、吉永が中平家に遊びに来た際、中平氏が「岡田さんにだまされちゃったって感じだ、と言っている人がいるけど」と水を向けるとキッとした怖い表情になり、
「私がだましたんです! 向こうは逡巡(しゅんじゅん)していたけど、私が迫ったんです!」
と強い口調で反論したという。
結婚後、吉永は1年以上の休養生活に入る。
「目玉焼きとサラダとカレーぐらいしか料理ができなかったのに、料理教室に通い、献身的に築地まで買い物に行き、主婦生活を満喫していました。ある時、じゃがいもコロッケを作り、『どうかしら』と聞いたら岡田氏は『んー、まあまあだね。もうちょっと‥‥』。で、小百合ちゃんは『どこがもうちょっとなの?』と。そんなやり取りをしていたようです。またある時は生牡蠣を食べようとして小刀で手のひらを切ってしまい、医者に診てもらった。で、帰ってきたらまた生牡蠣を食べたりと」(中平氏)
岡田氏はとあるインタビューで「愛情表現でもずいぶん女っぽいことをしますよ」と話しているが、はたしてそれは‥‥。