梅雨の最中で本格的な夏を迎える前、上半期の掉尾を飾るのは関西版グランプリ、宝塚記念だ。秋に備えて休養に入る馬も多い中、今年もなかなかの好メンバーによる争いとなった。
とはいえ、コロナ禍により海外での出走がご破算になったケースを含め、久々の実戦になる馬も多い。GI馬の参戦は多いものの、簡単に実力どおり決まるかどうか。そのへんの判断も難しく、おもしろくも、馬券的には難解な一戦と言っていいかもしれない。
まだまだ活躍の余地を残すグローリーヴェイズ(香港ヴァーズ)、サートゥルナーリア(皐月賞ほか)が最有力視されるだろうが、ブラストワンピース(有馬記念)、ワグネリアン(ダービー)も差はなく、さらには生きのいい4歳馬クロノジェネシス(秋華賞)や、ラッキーライラック(大阪杯ほか)といった両女傑が控えている。
いずれの馬が勝っても納得もので、それに続く伏兵陣も多彩。まさに初夏の祭典である。
まずはデータを見てみよう。3歳馬の参戦も可能なGI戦で、以前は上位争いを演じることもあったが、12年を最後に出走がない。やはり若駒の無理使いは避けたいのだろう。年齢的にはノビシロ十分な4歳馬、充実著しい5歳馬の活躍が目覚ましく、この両世代がそろって馬券圏外に敗れたのは、93年にメジロマックイーンが勝った年まで遡ることになる。
ならば今年も4、5歳馬からということになるが、前述した人気勢に全幅の信頼を寄せていいかと問われると、さてどうだろう。
馬単が導入されて17年になるが、この間、1番人気馬は4勝(2着5回)、2番人気馬は2勝(2着2回)。1、2番人気のワンツー決着はわずか1回のみで、馬単での万馬券は7回(馬連では3回)。意外に波乱含みの一戦なのだ。
また、昨年のリスグラシューの圧勝劇を見てもわかるとおり、牝馬は3勝(2着3回)と怖い。暑さに強いという理由もあるだろうが、であれば、前述の両女傑は要注意ということか。
いずれにせよ、波乱の目があるのであれば、穴党としてはむろんのこと視野を広げてみたい。
狙いはモズベッロだ。GI勝ち馬がズラリと顔をそろえる中、今年1月にGII日経新春杯で初めて重賞を制した馬。まだ新参者と言っていいだろう。
それでも、ここにきての急成長ぶりは特筆ものだ。3勝クラスの身でありながら、日経新春杯を勝ったこと自体もすごいが、続くGII日経賞(斤量4キロ増)は別定戦でありながら、勝ったミッキースワローとコンマ2秒差の2着と頑張ってみせた。しかも、最後の直線で勝ち馬に寄られる不利を被ってのもので、まともだったら、かなり際どかったことだろう。
前走の天皇賞・春は、積極的なレースをしながら7着に敗れたが、これはやむをえない結果。日経賞からさらに斤量2キロ増、初めて背負う58キロでの競馬で、この馬にとっては3200メートルも長かった。道中、引っ掛かる場面があり、折り合いを欠いていたことからも明らかだが、それでも勝ち馬とはコンマ9秒差。3着のミッキースワローとは、コンマ5秒差だった。
母ハーランズルビーは、GIアルシバイアディーズSの2着馬で、一族に活躍馬が多くいる良血。評価は低く人気もないが、期待するに十分の力量馬なのだ。
さらにここは実績のあるベスト距離。勢いに乗る4歳馬で、まだまだノビシロも十分ある。強敵相手にもまれ、急激に力をつけていることを思えば、極端な道悪にならないかぎり、巻き返しがあっていい。