風薫る5月。春競馬は佳境を迎えるが、世の中、コロナ禍で羽を伸ばすことができず、一向に盛り上がらない。それでも馬券は売れ、興行は成り立っているのだからありがたい。我々競馬をなりわいにしている者としては感謝あるのみだ。
6週連続GI戦の最初を飾るのは、伝統の天皇賞・春。昔と違って3000メートル超えのGI戦は世界的にはきわめてマレだが、それでも淀を舞台とした長丁場の大一番は、騎手の心理戦もかいま見られて実におもしろい。
今回も名だたるステイヤーがそろった。有馬記念以来になるフィエールマン、前哨戦の阪神大賞典を快勝したユーキャンスマイルが最有力視されているが、京都と相性のいい菊花賞馬キセキ、ミッキースワロー、モズベッロなど顔ぶれは多彩で、どう転ぶか予断を許さない。馬券的にも実に興味を引くGI戦である。
データをひもといても簡単に決まりづらいことがわかる。03年に馬単が導入されて以降の過去17年間、その馬単での万馬券は半分近い8回(馬連7回)。このへんもまた長距離戦の醍醐味でもある。
出走頭数の多さもあるが、充実著しい4歳馬、今がピークの5歳馬の活躍が目立ち、過去17年で7、8歳馬の勝利はない。
ということで今回は、その有力どころが多い4、5歳馬に目をつけてみたい。といってもフィエールマン、ユーキャンスマイルといった、いかにも人気馬ではない。最も期待を寄せたいのはモズベッロである。
実績あるこのメンバーに入ると格下的存在だが、それでもここにきての充実ぶりには目をみはるものがあり、その勢いをもってすれば、十分に勝負になるとみての狙いだ。
まだ準オープン(3勝クラス)の身で臨んだ日経新春杯を軽ハンデ(52キロ)を利して制したが、前走の別定戦(56キロ)で争った日経賞も差のない2着と奮闘してみせたのだから、目下の充実ぶりはおわかりだろう。
この中間もすこぶる順調で、1週前の追い切りも軽快かつリズミカルで、まずは文句なしだった。
「とにかく元気いっぱい。ひ弱さが解消しつつあり、追い出してから内にもたれるクセがなくなってきた。早くから期待していた馬。ここに入っても素質はヒケを取らない」と、森田調教師が期待のほどを口にするのも納得だ。
父はダービー馬で、母の父がハーランズホリデー、祖母の父がセントバラードとスタミナ満点で、距離の不安はまったくない。加えて京都コースは最も得意とするところ。走れる条件はそろっている。よほどの道悪にならないかぎり、チャンス十分とみた。
NHKマイルCは、ウイングレイテストをイチオシしたい。前走のニュージーランドTは、大外枠(16番枠)の不利がありながら、勝ち馬とはコンマ1秒差の3着。一段とパワーアップしており、期待大だ。