今週のメインは、よく荒れる重賞として知られる函館記念である。
私事で恐縮だが、この重賞は思い入れが強い好きなレースの一つだ。現地での取材を長く続けてきたこともあるが、それが今年はコロナ禍のためにプツンと切れてしまった。競馬施設での取材は東西のトレセンを含め、どこも制限されており、年配である私には、お鉢が回ってこなかったわけだ。
それでもこの原稿をしたためているレース1週前にして、浮き足だっている自分に気づく。過去、万馬券(馬単、馬連)が何度も飛び出しており、そのうちの何回かをモノにしている。
そんなこともあってのことだが、今年も顔ぶれを見ればわかるとおり、一筋縄では収まりそうにない。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの18年間、馬単で万馬券になったのが半数の9回もある(馬連では4回)。この間、1、2番人気馬でのワンツー決着は3回出ていながら、1番人気馬は3勝(2着3回)、2番人気馬も3勝(2着2回)というもので、とにかく人気、有力どころですんなりとは決まりにくい重賞なのだ。
他の重賞同様、充実著しい5歳馬が最も連対を果たしているが、その反面、7歳、8歳の高齢馬(中には10歳馬も)の健闘が目立つのが特徴だろうか。荒れる理由は、こうしたところにありそうだ。
さて今年は、どうだろう。ざっと見渡しても、人気順をつけるのさえ難しい、そんなメンバー構成である。しかもハンデ戦だけになおさらだ。
目移りするが、穴党としては牝馬に目をつけ、期待を寄せてみた。狙いは充実ぶりが目立つ、ミスマンマミーアである。
過去18年間で見ると、牝馬の活躍はきわめて少ない。出走頭数が多くないことによるものだが、連対を果たしたのはわずか2頭で、勝ち馬はいない。とはいえ、この2頭ともミスマンマミーアと同じ5歳馬。決して軽く見てもらっては困る。
ダート実績があり、3歳初めに地方競馬(船橋)に移籍したが、芽が出ずに再び中央へ。今度は芝で活路を見いだし、昨秋は3勝クラスの身で重賞(エリザベス女王杯、中日新聞杯)に挑戦。しかし、その時点ではさすがに荷が重く、今春、放牧。これでリフレッシュさせ、成長を促したのが大きく奏功した。
休み明け初戦となった烏丸Sでは、インから強烈な差し脚を発揮して勝ち上がったが、それまで見られなかった好内容に寺島調教師をはじめ、厩舎関係者が「ようやく本物になった感じ。これからが楽しみ」と、口をそろえるほどだった。
続く前走のマーメイドSは9着に敗れたが、これは前残りのレース展開の中、最後方からの競馬ではさすがに厳しかった。パドックでも落ち着きを欠いていたことを思えば、「2走ボケ」でもあったのだろう。
それでも勝ち馬との差は4馬身半。決して悲観すべき内容ではない。
今回は、叩き3戦目。ここを目標にしっかりと調整され、1週前の追い切りも軽快で文句なしだった。体が一回り大きくなり、たくましくなっているのも好材料。身上の強烈な末脚に磨きがかかっているはずで、ならば勝ち負けになってもいいのではないか。
ハンデは、牝馬同士のマーメイドSが53キロだったことを思うと、牡馬相手のここは恐らく52キロまで。函館の芝は初めてになるが、札幌のコスモス賞で2着した実績があり、道悪は〈1 1 0 0〉とうまい。力を要す洋芝は間違いなく合っており、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。