エンタメ

藤井聡太「8冠」までの1000日計画(3)因果巡る中学生棋士の歴史

 さて、時計の針を20年に戻そう。

 この記事が出ている時点で、豊島将之名人に渡辺二冠が挑戦する今期の名人戦が行われている(第4局が7月27─28日)。史上4人目のA級全勝という圧倒的強さを誇った渡辺二冠がチャレンジャーとなり、今最も強い2人がガチンコで対決するファン垂涎のカードである。

 ここで、藤井棋聖の初タイトル奪取の相手にもなった、この渡辺二冠に触れておきたい。

 将棋史上5人しかいない「中学生棋士」だった1人なのだ。

 過去の中学生棋士は、

加藤一二三(14歳7カ月)/谷川浩司(14歳8カ月)/羽生善治(15歳2カ月)/渡辺明(15歳11カ月)/藤井聡太(14歳2カ月=史上最年少)

 そして巡る因果は糸車、彼らを追えば、将棋の歴史をたどれるのである。

 加藤から89年に名人を奪ったのが谷川。その後、谷川と中原誠の双頭時代を経て、平成の世は「羽生世代」と呼ばれる昭和45年組の黄金時代となる。

「羽生があまりにも強すぎたため、一度も羽生と当たることなく引退した棋士が多かった(挑戦者にならないかぎり、対局できない、の意)」

 とまで言われた。

 終わりなき王朝が続く中、ついに羽生を脅かす存在として現れたのが渡辺だ。特に08年の竜王戦は語りぐさで、将棋界に一度も出現しなかった「七番勝負3連敗4連勝」を達成。「名勝負」や「神回」、そして「時代」は彼らが作ってきた。

 だから藤井棋聖初戴冠の相手が渡辺二冠だった時、将棋ファンは「歴史は繰り返す」と嘆息したのだった。

 竜王戦と棋王戦にめっぽう強い渡辺二冠だが、名人挑戦は今回が初めて。ぜひとも獲りたいタイトルだ。徳川家康が家元として俸禄を与えた初代大橋宗桂から数えて、名人位の歴史は400年あるが、26人しか戴冠していない。それゆえ「将棋の神に選ばれた者だけが名人になれる」と、まことしやかに語られる、由緒ある肩書なのである。

 先の8つのタイトルホルダーを見るとわかるように、現在の将棋界は、豊島竜王名人、永瀬二冠、渡辺二冠の3人が抜きん出て強い。

 しかし、羽生時代をようやく終わらせかけた「彼らの栄華時代」に、早くも現れた次世代が藤井棋聖なのだ。

 そう簡単には譲れない。新棋聖との対戦成績が4勝無敗の豊島竜王名人は、藤井ファンからゲームのイメージで「ボスキャラ」と呼ばれ始めた。今後も進撃に立ちふさがるのか。ともかく、将棋界は時代の大きな変わり目を迎えている。

 将棋ファンの藤井棋聖に寄せる最大のロマンは、国民栄誉賞受賞者である「羽生九段の記録を抜けるのか」にある。

 特に25歳5カ月で7冠を達成した「全冠同時制覇」「タイトル獲得99期」のふたつは誰にも破られない、王貞治の本塁打記録級のものだ。しかし、前人未到の8冠同時制覇も、藤井棋聖ならば夢物語に終わらないだろう。

 同業者である棋士たちすら、畏敬と期待の声を上げる。次回からは、そうした評価、解説を含め、もっと深く藤井の強さに迫りたい。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
3
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏
4
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」
5
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」