従業員の残業問題で自殺者も出るなどの行状で「ブラック企業」と批判されつつも、創業者を国会に送り出したワタミがトラブルに巻き込まれている。舞台はワタミが展開する介護ビジネス。老人ホームとして使おうと建設した物件の賃貸契約を巡り、地主が建設会社も含め、「あまりにひどい」と憤慨しているのだ。
日本最大級の居酒屋チェーンを展開する「ワタミ」グループ。先の参院選で当選し国会議員となった創業者、渡邉美樹氏による「365日24時間死ぬまで働け」を合言葉に成長を遂げたが、本誌がこれまで報じてきたように26歳の女性従業員が入社2カ月で過労自殺に追い込まれるなどの深刻な労働問題が頻発し、日本で最も有名な「ブラック企業」として認知されている。
現在では外食産業にとどまらず、農業や教育など多角的にビジネス展開する同社の大きな事業となっているのが「ワタミの介護」。さるジャーナリストは、ワタミが老人ホーム建設を巡るトラブルに巻き込まれていると話すのだ。
「神奈川県相模原市に、鎌倉時代からの大地主として、地元では知られる細谷家の土地があります。“被害”を訴えているのはこの細谷家の当主。細谷家が約800坪の土地の有効活用法を横浜銀行町田支店に相談したところ、ワタミ、そして地元の西野建設を紹介されたんです。介護施設を造って賃貸すれば安定収入を得られるうえ、建設資金も横浜銀行が貸し付けるというので、話はすぐにまとまったようです」
ところが、蓋を開けてみれば、細谷家にとって不利な契約となっており、裁判ざたに発展しているという。はたしてこれは本当なのか。
本誌は当事者に話を聞くべく細谷家に取材を試みた。当初は「あまりトラブルを公にしたくない」と渋っていたが、度重なる要請に、88歳と高齢の当主に代わり、神奈川県議会議員である長男の政幸氏が重い口を開いてくれた。
「発端は10年4月でした。最初は横浜銀行にワタミを紹介されたんです。その後、5月に横浜銀行から、建築は西野建設でどうかと提案されました。ワタミと仮契約をしたのは6月なのですが、建築費のことを聞くと『いつもは6億円後半から7億円ぐらいで建てているんですよ』と。ワタミと賃貸契約をしたのは10年9月。家賃は430万円ということでした。その後、11年2月には西野建設と契約した。この時の仮契約書は紙1枚で、約款も図面もありませんでした」
とはいえ、政幸氏はワタミの説明と、西野建設の社長が高校の後輩で旧知の間柄であることなどから信用し、建設に向けての作業は進められたという。