戦国から江戸時代にかけて、武将たちが夢中になった「側室」は、ただならぬ妖気を放った。それを演じた女優たちは、スクリーンでも魔性を発揮する。
滝田栄主演の「徳川家康」(83年)は、絢爛豪華な女優たちが側室として登場している。まず、家康の父・松平広忠(近藤正臣)のそばには高橋惠子と石田えりが、家康には竹下景子と東てる美が身を寄せる。
家康は正室・側室合わせて十一男五女をもうけただけに、性的欲望の面でも天下獲りにふさわしい豪の者だった。
さて、その父である広忠の側室を演じた高橋惠子は、15歳のデビューから7作連続で脱ぎシーンをこなした。傑作はいくつもあるが、“日活ロマン映画”に初出演した「ラブレター」(81年、日活)こそ代表作との呼び声が高い。ベッドシーン事情に詳しい映画ライター・松井修氏が絶賛する。
「15歳のデビューから脱ぎ続けていますが、ちょうど30歳になった頃の作品なので、体が引き締まって肌の美しさもこの上なしです」 として、このベッドシーンがはふんだんに出てくる作品が、「最後にして最高の」脱ぎ姿とと言えるだろうと強調した。
同じく広忠の側室となった石田えりは、高橋から2年後に「ダブルベッド」(83年、日活)でロマン映画に出演。ベッドの上で豊かなバストをさらし、慰め行為にふけるシーンが印象深い。
そして家康の側室である東てる美は、谷ナオミの秘蔵っ子としてデビューし、“SとMを扱った作品”を中心に鮮烈プレイを見せている。
意外なのは同じく家康の側室で、秀忠・忠吉の聖母となる「お愛」を演じた竹下景子だ。高視聴率番組「クイズダービー」(TBS系)で76年に大人気となるが、その前年に「祭りの準備」(ATG)でお宝マッパを披露している。前出・松井氏によれば、「当時『お嫁さんにしたいナンバーワン女優』と呼ばれていました」が、映画では驚くほど豊かなバストを見せていたという。江藤潤が相手のベッド場面自体は「さほど激しいものではなかった」というが、「やはり、あの竹下景子が!という思いに尽きると思います」とか。
流行したフレーズで言うなら「竹下さんに3000点」を差し上げたい。
さて、大河ドラマの歴代トップとなる平均視聴率39.7%を記録したのは「独眼竜政宗」(87年)だった。渡辺謙扮する政宗の側室・猫御前を演じたのは秋吉久美子であるが─。
松井氏によれば、「10代の頃は、ただ脱いでいるという感じ」だったが、三十路を過ぎての「ひとひらの雪」(85年、東映)は、さすがに渡辺淳一原作だけに、しっとりした艶っぽさを感じさたという。津川雅彦に着物姿でバックから行為に及ばれるシーンもあり、「一般映画として異例の5分にも及ぶカラミは見応え十分」だそうだ。
そして戦国史上最も有名な側室は、豊臣秀吉を夢中にさせた「淀君」だろう。勝新太郎扮する秀吉の寵愛を受けたのは樋口可南子だった。
勝新と樋口は「座頭市」(89年、松竹)でも夜の風呂場で濃厚なカラミを見せているが、樋口は日本初のヘア出しの写真集を発売するなど、「時代時代で性表現をリードしてきた存在」だとして、松井氏は、そんな彼女が、ガッツリとしたベッドシーンを演じた「卍」(83年、東映セントラル)こそが「頂点でしょう」と言う。
文豪・谷崎潤一郎の原作をもとに、夫婦(原田芳雄・高瀬春奈)のどちらとも関係を持つ奔放なオンナを演じている。豊かな体型の高瀬との同性好き同士の情事シーンは、樋口のリードが巧みで、原作に描かれた艶っぽさを「忠実に再現」しているという。最後は、高瀬の夫である原田を寝取って対面で座った体勢、そしてまたがる形へと体勢を変え、「果てた瞬間に死ぬという衝撃のラストでした」(松井氏)。
続く竹中直人主演の「秀吉」(96年)では、まだ10代だった松たか子(43)が、若さあふれる淀君を演じた。それから時は流れ、リアリティーあふれる“自分で慰める行為”シーンを「夢売るふたり」(12年、アスミック・エース)で見せている。
夫の不在時に座卓に広げた領収書と格闘中、ふと思い立ったように、手は女性器の敏感な場所をピンポイントで刺激する…。肌見せは、「控えめ」だというが、「表情や肩、首の動きなど、上半身の動きで快楽を表現していたのがミソ。途中、ファックスの受信音で邪魔され、濡れた手をティッシュで拭くなど、実在感たっぷり」(松井氏)なシーンだったという。
太閤殿下でなくとも籠絡されることは必至だ。