全日本空輸(ANA)が社員の副業範囲を拡大する方針を固めるなど、従業員の副業を認める企業が増えている。
「終身雇用が崩れた今、就職してからも自分の得意な分野や、興味がある分野の仕事を副業としてやってみるのもいいかと思います。あるいは50歳くらいになって、管理職になるのではなく、会社を辞めて個人事業主としてその会社と契約をしてみるという道もあります」
と指摘するのは、ジャーナリストの池上彰氏だ。自身も54歳で早期退職制度を利用して、それまで勤務していたNHKを退職。その後はテレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中なのは周知の通りである。
そんな池上氏がこのほど上梓した「私たちはどう働くべきか」(池上彰著/徳間書店)では、テレワークの有無、転職、副業をはじめとするコロナ禍での新しい働き方を解説。冒頭の指摘についても詳しく解説されているが、本書では、さらに、自分自身の働き方も公開している。
池上氏がNHKをやめた理由として一番大きかったのは、NHK内で解説委員になる可能性がないことを知ったからだという。解説委員だけは、自分で取材し、自分でレポートすることも可能なので「生涯一記者」を貫くことができるから、と池上氏は強く希望していた。しかし、当時、池上氏は「週刊こどもニュース」で政治から社会まで何でも「解説」していた。
ところが解説委員は、中東問題の専門家など、ひとつの分野の専門家なので、池上氏はなれないとのことなのだ。NHKでの人生設計がガラガラと崩れた瞬間で、しばらくは落ち込んだが、「いろいろなことを説明する」という専門性があるのではないかと思い直した、という。そしてフリーランスのジャーナリストに転身した。
池上氏は、フリーランスで仕事をする上で大切にしているのは「自分自身のブランディング」。そのために、池上氏は「信頼されるジャーナリスト」として自身の価値を高めていくことにした。コマーシャルには出ない(特定の企業のコマーシャルに出ていたらその企業に不祥事があった場合、ジャーナリストとしてコメントがしにくくなるから)、
金融取引もしない、政治家の後援会でも講演しない、などジャーナリストとしてのモラルを強く意識する姿勢を貫いている。本書では自分自身の価値の高め方も詳しく解説している。
「池上彰自身の働き方」は、あらゆる世代の「働く」人たちにとって大いに参考になりそうだ。