山下真司扮する「泣き虫先生」が、高校の弱小ラグビー部を全国制覇させるまでの道のりを描いた「スクール☆ウォーズ」(84~85年、TBS系)。元不良の部員「大木大助」役の松村雄基(50)が、いろいろな意味でハードだった撮影の日々を振り返った。
「『スクール──』の最終回で思い出すのは、最終回の冒頭で使われたシーン。これはドラマそのものの最初のロケで撮影されたシーンだったということですね」
みごと「川浜高校ラグビー部」が全国制覇を果たす試合が始まる直前、すでに同校を卒業しコーチとなっていた大木(松村)ら「ラグビー部」の関係者たちが、競技場の観客席で再会し声を掛け合う──。そんなシーンだが、これはドラマの最初のロケで撮影したものだった。ドラマ初回の冒頭でもこのシーンを流し、そこから回想して、物語が展開するという構成だったためだ。
「原作も読まずに最初に撮ったシーンだったので、最終回の撮影時にこのシーンの前後を撮る時は戸惑いましたよ。衣装ももちろん、体型も維持したり髪形を合わせるなど大変でした(笑)。今みたいにビデオではなくフィルム撮影ですから、スチール写真を見ながら前に撮ったものと整合性がつくように撮るので大変でした」
「川浜界隈一のワル」として、恐れられながらも入部し、ラグビー部が躍進する立て役者となる。そんな役柄だった松村は当時21歳だったが、周囲の反響はどうだったのか。
「当時は電車で撮影現場に通っていましたが、髪型をツッパリ風ではなく普通に下ろしていると、全然僕とわからなかったみたいで、後ろで女子高生が『あの場面で大木は泣きすぎだよねぇ』などと話をしていて苦笑してました」
大映テレビが制作していたこのドラマでは、台本は絶対だった。
「『一字一句、それこそ誤字まで正確に覚えろ!』という感じでしたから、〈泣く〉と書かれていたら、泣くしかなかったんですよ」
撮影に忙殺され、実際の放送を見ることもほとんどできなかったというが、話題になっていることは手に取るようにわかったという。それでも、冬場の撮影はかなり応えたようだ。
「どんなに寒い冬の撮影でも、『ラグビー部っぽく見えないから常に短パン』って決められていて。大木大助の髪型はディップで上げていたんですが、グラウンドで髪型を直そうとしたら半分凍ってジャリジャリになっていた。汗をかいているように見せるために霧吹きで全身に水を吹きかけていたんですが、それも凍ってしまって、霧吹きの霧も出なくなりました」
ドラマのもととなったのは、当時ラグビーでは無名だった京都市立伏見工業高校を、元日本代表の同校監督・山口良治氏が立て直し全国制覇させた軌跡を描いたノンフィクション。
しかし、ドラマではグラウンドや廊下をバイクが走り回るシーンや窓を叩き割るシーンもあり、放送直後から学校関係者や保護者から、「伏見工業はこんなに荒廃していない」といったクレームも少なくなかった。
「スタッフがそうした声に『校内暴力が社会現象化している今、それをなくそうという意図で、ラグビーを通してみごと立ち直った伏見工業をモデルにしている』と説明を繰り返しました。で、実際に放送の回が進むと、『感動した』『自分の学校に誇りが持てた』とか、劇中に出てくるラグビー部のOBからも、『あの頃を思い出す。ありがとう』など全て激励の言葉に変化してうれしかったですね。僕ももう50ですが、僕の中では20代のあの頃と何も変わっていない。まだまだバリバリやれる年齢ですよ」
11月6日にCD「武雄傳」をリリース。目下、音楽活動にも力を入れている松村の、「スクール──」など、若き日にドラマで培ったパワーは、さまざまな形で発揮され続けている。