悪化する日韓関係の中でトゲのように刺さる慰安婦問題。93年、当時官房長官だった河野洋平氏が「談話」として謝罪したことで、韓国の「政治カード」として利用されるようになった。10月16日、産経新聞は「河野談話」への疑義を投げかけるスクープ記事を掲載したが、識者たちはどう受け止めたのか──。
〈元慰安婦報告書ずさん調書〉
これは産経新聞10月16日朝刊の1面大見出しである。
〈慰安婦募集の強制性を認めた平成5年8月の「河野洋平官房長官談話」の根拠になった、韓国での元慰安婦16人の聞き取り調査報告書を入手した〉
こう書き出されたスクープ記事だが、同紙はその日、実に4面もの分量を使い、この問題を報じたのだ。
第二次世界大戦時、朝鮮半島を統治していた日本軍の要請で、慰安所で働く朝鮮人慰安婦が集められた。この「慰安婦問題」は65年、日韓基本条約に伴う請求権協定で「完全かつ最終的に」解決されている。しかし、91年、朝日新聞が、慰安婦が軍による強制連行で集められたことをキャンペーン報道し、世論が湧き上がったのだ。
93年、宮沢(喜一)内閣時に、当時官房長官だった河野洋平氏(76)が「官房長官談話」=「河野談話」として、韓国に謝罪。以降、韓国側は「政治・外交カード」として事あるごとに「慰安婦」問題を持ち出すことになった。今回の記事の取材・執筆を行った産経新聞政治部記者・阿比留瑠比氏はこう語る。
「歴史事実に関する知識も謙虚さも持ち合わせない政治家らが、外国の要求に簡単に屈して安易な妥協を図った結果が、今日の悲惨な状況を生んだものと考えます。正しい歴史事実を主張せず、善意もあって『なあなあ』で済ませようと譲歩したことで、かえって『日本は後ろめたいから認めたのだろう』と勘ぐられ、攻撃されるというパターンを戦後日本外交は繰り返してきました。日本国内では有効な“あうんの呼吸” “譲り合い”などは国際社会では通用しないという当たり前のことを、なぜか理解できない政治家が少なくないようです」
「談話」作成にあたって、日本政府は16人の元慰安婦たちに聞き取り調査を行ったが、その報告書は公開されていなかった。しかし、産経新聞はこれを入手し、今回の記事で証言のウソを指摘、「談話」の薄弱な論拠が暴かれたのだ。
韓国に対して「土下座」とも言える姿勢を繰り返してきた日本。朴槿惠〈パク・クネ〉韓国大統領(61)は、こうした歴史認識問題でさらなる謝罪を要求するのだが、前出・阿比留氏はこう反論する。
「すでに謝罪は不必要なくらい繰り返しており、ここでまた謝れば、日本は未来永劫、韓国人に会うたびに謝罪しなければならなくなります。そもそも、70年も前のことを言い募るほうが、日本人の常識ではまともではありません。日本に言いがかりをつけてくるのは中韓2国だけなのです。欧米も含む第三国を粘り強く説得し、韓国の非と無理を理解させるべきでしょう」
河野氏に今回の報道の一件で取材を申し込んだが、秘書は「談話の取材は一切断っている」と答えた。記事は読者に大きな反響を呼んだと、前出・阿比留氏は語る。
「そのほとんどが高く評価する、さらに追及してほしいという内容でした。また、自民党、日本維新の会の複数の国会議員からも『話を聞きたい』という声がかかりました」
はたして、識者たちは、この記事を受けてどう思うのか──。