春爛漫。伝統の天皇賞・春 が5月2日に行われる。長丁場で争われる「春の祭典」は、数々のドラマを生み続ける、日本ならではのおもしろくも見応えある競馬と言っていい。芝3200メートルという舞台装置は、世界でもマレ。スピード全盛の時代にあって、とにかく興味尽きない一戦だ。
それだけに不確定要素が少なくない。芝2000メートルで争われる天皇賞・秋より波乱含みである。
「秋の盾」は府中の芝2000メートルが舞台ということで、多頭数になるほど外枠の馬が不利を被ったり、スムーズな競馬ができない場合が多く、簡単に決まりづらい。なのに、馬券的には「春の盾」のほうが荒れている。長丁場のレースが少ないことから、出走各馬のスタミナの有無、距離の適性をきっちり読めないことによるものだろうか。いずれにせよ、馬券的には穴党向きの一戦だ。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの18年間、その馬単での万馬券は8回(馬連は7回)。この間、1番人気馬は4勝(2着1回)、2番人気馬は6勝(2着2回)。1、2番人気馬のワンツー決着は2回のみと、人気どおりにはいかず、過去のデータからも難解なGI戦であることがわかる。
また、他のGI同様、年齢的には4、5歳馬がよく連対を果たしている。出走頭数が多いこともあるが、そのあたりは頭に入れておいていいだろう。
それでは今年の顔ぶれを見てみよう。これは、と絶対視できるような馬はいない。本来なら菊花賞で3冠馬コントレイルと大接戦を演じたアリストテレスが不動の存在、主役となってよかった。が、前走の阪神大賞典でよもやの大敗(7着)。道悪に敗因をみる向きもあるが、前々走のAJCCは不良馬場で勝利をモノにしている。陣営の落胆ぶりはかなりのもので、それだけにきっちり巻き返せるかどうか、微妙である。
他ではとなると、牡馬ではオーソリティ、ディープボンド、ユーキャンスマイル、そして復活の兆しが見える菊花賞馬ワールドプレミアということになるが、それでも全幅の信頼を寄せきれるまではいかない。
今年の特徴としては牝馬の存在。前哨戦の日経賞を勝って意気上がるウインマリリンと、同2着で女丈夫と言っていいカレンブーケドールだ。ともに有力候補ではあるが、「秋の盾」とは対照的に、過去18年間で牝馬の連対はまだない。そのあたりがどう出るか。
いろいろ見ていくと、今年も一筋縄では収まりそうになく、ひと波乱があってもよさそうなGI戦だ。
穴党として最も狙ってみたいのは、オセアグレイトである。
牝馬のワンツーとなった日経賞は6着。好位で立ち回ったが伸びきれず、勝ち馬との差はコンマ6秒。しかし有馬記念以来3カ月ぶりの実戦で、馬体に余裕を残していた。なので使われての変わり身は十分期待していい。
実際、この中間の稽古内容は軽快かつリズミカル。雰囲気がすごくいい。
「本格化してきたと言っていい。ひ弱な面がすっかり消えて本当にたくましくなった。長丁場は得意だし、そう見劣りしないと思う」
菊川調教師は、こう期待のほどを口にする。
確かに昨秋、ステイヤーズSで初重賞を制してから馬が変わった。続く有馬記念でも9着ながら、勝ち馬とはコンマ9秒差。健闘ぶりが目立っていた。なら実績ある芝3000メートル超のレース。チャンスは十分あっていい。
大一番に強いオルフェーヴル産駒で、ジェネラス(英・愛ダービー)など、近親、一族に活躍馬が多くいる血統馬。大きく狙ってみたい。