秋のGI第1弾スプリンターズSが今週のメインとして中山競馬場で行われる。今年もフルゲート必至で、顔ぶれは実に多彩だ。
前哨戦のセントウルSを完勝した高松宮記念の覇者ファインニードルを筆頭に、キーンランドCで初重賞制覇を果たしたナックビーナス、スプリンターズS3連覇がかかる古豪レッドファルクス、そしてレッツゴードンキ、セイウンコウセイ、香港からの刺客ラッキーバブルズと、胸躍る好メンバーで、馬券的には実におもしろい。
本来なら勢いに乗るファインニードルを主力に見るのが筋だろうが、そう簡単にいくかどうか。伏兵陣も含め、各馬の能力の差はそうあるとは思えず、波乱の目も十分にありそうだ。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの16年間、その馬単で万馬券になったのは4回(馬連は1回)。この間、1番人気馬は7勝(2着3回)、2番人気馬が1勝(2着7回)で、1、2番人気馬でのワンツーは4回。データからは大きく荒れる可能性は小さいと言えるが、それでも人気薄の馬がちょいちょい連に絡んでおり、中穴傾向のGI戦と言っていいだろう。
年齢的には充実ぶりを見せる4、5歳馬の活躍が目立つが、6歳馬もよく健闘しており、古馬を軽く見るのは禁物だ。
そしてこれまでにもサイレントウィットネス(05年)、ウルトラファンタジー(10年)が勝っている香港馬。今年はラッキーバブルズだが、ピークを過ぎたとはいえ、GI戦で常に上位争いを演じてきた強豪。ただでは帰るまい。
前走は59キロの斤量を背負って勝ち馬と半馬身差の3着。体重が減っていたのでプラス体重で出走できるかがカギになるが、一族にシーバードパーク(桜花賞2着)など活躍馬が多くいる良血。要注意である。
またこのGI戦、過去16年で5勝(2着5回)と牝馬の活躍が目立つが、穴党としてもその牝馬に目をつけたい。狙ってみたいのは、ダイメイプリンセスだ。
前走の北九州記念は、アレスバローズの出し抜けに屈したが、コースロスがあったことを思えば、よく頑張ったと言ってよく、好内容だった。
6勝中5勝が新潟の直線1000メートルであげたもの。距離うんぬんを指摘されそうだが、右回りはスムーズで、中山コースも相性がいい。6ハロン戦はまったく不安はなく、とにかく、ここにきての充実ぶりが著しい。
「牝馬にしてはオクテ。心身ともにたくましくなって、末脚に磨きがかかってきた。ここでも差はないと見ています」
森田調教師はじめ、厩舎関係者は、状態のよさをこう強調して胸を張るほど。1週前の追い切りも軽快かつリズミカル。しまいの脚も目立っていた。
血統もまたいい。母系は北米の一流血脈で、大種牡馬ヘイロー(サンデーサイレンスの父)の3×4の近親配合馬(父方の3代前と母方の4代前に同じヘイローの名がある=これを奇跡の血量と言う)であるのが、なんといっても魅力。よほど馬場が悪化しないかぎり、大きく狙ってみたい。
連下の筆頭にはムーンクエイクを挙げたい。
前走のキーンランドCは3カ月ぶりの実戦。しかも初めての6ハロン戦だった。馬が戸惑っていたようで行き脚がつかず、後方から。しかし直線に向くと、狭いインからすさまじい末脚を見せてくれた。58キロの斤量を背負って勝ち馬と5馬身半差なら“試走”としては上々の内容と言っていいのではないか。
藤沢調教師は常々「100回の追い切りより、一度の実戦」と言っており、使われた効果は明らかだろう。
短距離戦にホコ先を変えたのも正解と見た。