元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
高齢者へのワクチン接種が加速して「そろそろハワイにでも行けそうか」と、気持ちに余裕が生まれた年配者が増えているようです。先般のG7首脳の集合写真など、多少の距離はあるとはいえ、みんなマスクをしていなかったでしょう。あの年配者たちが。今や世界の感覚は「そっち」です。アメリカやフランスに至っては、ディズニーランドとタッグを組んで、敷地内に新型コロナワクチン接種センターをオープン。メジャーリーグでは、来場者みんなに無料でワクチンを接種。「海外からの観光客に無償提供」というワクチン事情はもはやアメリカでは当たり前で、目新しくもなくなったほどです。
実は今、永田町と霞が関でも、同じアイデアが持ち上がっているそうです。「野球観戦とセットでワクチンを提供するのはどうか」「日本の観光地と組んで、旅行者が接種したら何かしらのサービスをつける」など。言ってみれば、「GoToワクチン・トラベル」です。
例えば、東京ディズニーランドへ観光に行きます、そこで1回打ちました。だったら2回目もディズニーで打てばいいか、という行動を促します。観光とセットでワクチン接種の流れができれば、経済効果が上がるという目論見です。
この施策、対象は若者と中年です。高齢者はわざわざこの時期に、ディズニーランドや野球観戦になんて行かないでしょう。コロナを無自覚に広げてしまう若者を対象にして、あっちこっちに花粉を運ぶミツバチのような若者を抑制。ほぼアメリカの模倣ではありますが、これで感染率が大幅に減るという予想です。
とはいえ僕は、若者にはそこまでワクチンを無理強いしなくてもいいのではないかと考えます。若者にとっては新型コロナウイルスにかかることより、ワクチンの副反応リスクのほうが気がかり。ワクチンを打った数年後の未来(副反応)が見えないという話もあり、ここはちょっと慎重になってもいいかと。
そもそも陽性者のうち亡くなった人の致死率は、80代以上ではおよそ30%という調査結果もあり、70代となると15%ほど。それ以下の年代は、ほとんどがひと桁台で、やはり高齢世代のリスクが圧倒的に高いのです。その大半の死因と言われるのが肺炎ですが、肺炎は高齢になるほど亡くなる割合が上がります。
総合的に考えると「ワクチンはまだ躊躇してしまう」という高齢者に向けての「GoToワクチン・トラベル」がいいと考えます。温泉旅行とセットでワクチンを打つ、熱海や道後温泉、東大寺などへ観光する人は、駅前でワクチンを打てば宿泊料や拝観料が無料‥‥というような、渋い観光地とコラボするのです。
先日、大阪市の東成区役所が、ワクチンの集団接種における「接種辞退者職員リスト」を作成していたことが問題になりました。コロナ感染者への差別が進んで、今度はワクチン非接種者に対する攻撃が始まったら、日本は終わりです。東京五輪も有観客でやる方向のようなので、観光とセットでのワクチン施策をやるならやるで、早くしないとあっという間に五輪なんて終わってしまいます。
さぁその頃、ホントにハワイになど行けるのでしょうかね。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て、12年に衆議院議員に。16年に辞職し、経営コンサルタントや「サンデー・ジャポン」(TBS系)などに出演。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ではレギュラーMCを務める。